そのようなマクロ経済モデルに即して、過去30年間のアメリカのデータを分析した結果、自動化(ここでは「工場への産業用ロボットの導入」のこと)によって生まれる仕事よりも、消える仕事のほうが多かった、と結論づけている。

 もちろん、過去における「工業用ロボットの導入」と、未来における「AIによる各種タスクの自動化」の間には、分野や使途の違いも多いはずだ。過去のデータからそのまま未来を予測するのにも限界があるから、国と時代ごとの状況の違いを考慮した方がいいだろう。

ドイツでは、ロボット導入後も人材の配置転換がうまくいった

 実際、ドイツについて同様の分析をした別の論文「ロボットに適応する」(原題「Adjusting to Robots:Worker-Level Evidence」)では、アメリカとは対照的な結果が報じられている。ドイツの場合は、ロボット導入後も、企業内での人員の配置転換がうまくいったらしい。

注:論文へのリンクはこちら

 なお、これらのマクロ的な実証分析は、扱う対象やデータの性質上、因果関係の識別についてはツメが甘い傾向がある。だから、これらの研究によって「自動化が原因で、仕事が消える(または消えない)という結果が起こった」という因果関係が示された、と信じ込むのは早合点だ。

 そうではなく、あくまで「過去30年間のアメリカのデータに見られた相関関係が、同時期のドイツのデータでは見られなかった」という程度にユルく理解しておく方が安全だろう。統計や計量経済学になじみのない読者のためにもう少しかみ砕いて言うと、「ロボットの導入」と「仕事の増減」のどちらが原因でどちらが結果かが厳密に証明されたわけではなく、単にそれらの2つの出来事がほぼ同時に起こったという意味だ。

少子化と労働需給

 さて、未来の日本がアメリカとドイツ、どちらに近い展開になるのか、あるいは全然違う第3のパターンを示すのかは、分からない。だが、仮に工業用ロボットとAIが似たような技術革新である場合(そして仮に日本企業がドイツよりもアメリカに近い人事制度をとっている場合)には、AIの実用化が進むにつれ労働需要は減っていきそうである。

 それでは、AIの商業利用などさっさと禁止してしまったほうがいいのだろうか? そして日本の労働者は、「AI先進国」であるアメリカと中国の企業が(日本に本格進出する前に)全面戦争に突入して共倒れしてくれることを、ただ神頼みするしかないのだろうか?

 しかし、ここで忘れてはいけないのは、人口問題である。