AI(人工知能)は、あなたの仕事を奪うのか(写真=PIXTA)

 AI(人工知能)が仕事を奪う、世の中は大変なことになる――。AI技術の急速な発展が報じられる中で、世間では「ふわっとした」議論が繰り返され、「機械との競争」への漠然とした不安ばかりが煽られている。だが、本当にそうなのか。本コラムでは、世界最先端の経済学研究を手がかりに、名門・米エール大学経済学部で教鞭を執る伊神満准教授が「都市伝説」を理性的に検証する。

まずはじめに:連載コラム(全4回)の趣旨

 人工知能(AI)については色々な人が色々なことを言っている。だが、よく分からない未来を語るにつけて、楽観論も悲観論も、ただ各人が「個人的に言いたいこと」を言っているだけのように見える。

 となると、「AI技術は是か非か」「AI失業は起こるのか」「もはや人類の滅亡は時間の問題か」についての「結論」自体には、ほとんど何の意味もない。これだけ沢山の予想があれば、そのどれかは当たるだろうし、大半は外れるに決まっているからだ。

 そんなことよりも、冷静な人たちが交わしている「それなりの確かさをもって言えそうなこと」に耳を傾け、吟味しよう。そしてあなた自身の身の振りかたについては、あくまで自分の頭で考えよう。でなければ、あなたという人間の「知能」と人生に、いったい何の意味があるだろうか。

 このコラムは、経済学者である筆者が、9月中旬にカナダのトロント市で開催された第2回全米経済研究所(NBER)「人工知能の経済学」学会で行った研究発表と、そこで見聞きした世界を代表する経済学者たちによる最新の研究について、一般向けにまとめたものである。

注1 第2回NBER「人工知能の経済学」学会のプログラム(論文・スライド・動画あり)は、こちら

「あなたの仕事が危ない」?

 まずは、AIが「人間の経済活動にもたらす」影響を考えてみよう。連載コラムの前半にあたる第1回と第2回では、AIの「外側」の経済学の話をする。

 AIやロボットは、これまで人力を必要としていた生産活動の「自動化」ととらえるのが一般的だ。そこで、AIの「外側」の経済学では、自動化技術の中身はさておき、それがもたらす経済活動へのインパクトを考察する(連載後半にあたる第3回と第4回では、AIの「内側」の経済学に触れる。この分類は、論点を整理するために筆者が独自に使っているものだ)。