仕事を、タスク分けしてみたら色々分かるかも(写真=PIXTA)

 この研究を発表したのは、米マサチューセッツ工科大学(МIT)のエリック・ブリニョルフソン教授だ。IT(情報技術)業界研究のベテランで、最近では『プラットフォームの経済学』(日経BP社)なども邦訳されている。彼自身も発表中に認めているように、数値結果そのものは、分析プロセスを少し変更しただけでも、ガラッと変わる。

注3 20分間の研究発表(および討論者による10分間のコメント)の動画は、こちら。リスニングが苦手な人は字幕を表示させるとよい。また、英語自体が苦手な人は、不正確ながらも字幕を自動和訳して表示することが可能だ。

 たとえば、大学教授の仕事(B)教育について、具体的なタスクをいかに定義するのか、どこまで適切に細分化できるのか、本当にうまく自動化できるのか、大学教授であるはずの筆者にもよく分からない。

 また、(B)教育を自動化した結果、大学教授というポストそのものが消滅してしまうのであれば、筆者は専業コラムニストに転職せざるを得ない。しかし逆に、これまで(B)に割いていた時間と体力を(A)研究に注げるようになるのであれば、願ったり叶ったりだ。

 だから、たとえ「学者が科学的にたどりついた発見や数字」であっても、結論そのものには飛びつかない方がいい。当然、(自称)コンサルタントや(自称)天才プログラマーが適当にぶち上げている「未来予想」については、言うまでもない。

自動化しやすいタスクの8条件

 ……というわけで、ブリニョルフソン教授らによる論文自体は未完成なのだが、理論的考察の大枠については、『サイエンス』誌上で「機械学習で何ができるのか? 労働需要への影響について」という短い記事を読むことができる。

注4 原題「What can machine learning do? Workforce implications: Profound change is coming, but roles for humans remain」 Science (22 Dec 2017), Vol. 358, Issue 6370, pp. 1530-1534.

 その要点をまとめると、タスクを自動化するためには、8つの条件が必要だという(表1)。ちなみにこれは、スタンダードな「教師あり機械学習」、つまり回帰分析のようなデータ処理を主眼としたリストである。

表1: 「自動化しやすいタスク」の8条件
1.「インプット」と「アウトプット」が、どちらも明確になっている。
2.インプットとアウトプットを正しく対応させたデジタルデータが、大量に存在する。
3.明確なゴールがあり、その達成度について明確なフィードバックがある。
4.長々とした論理展開や、いろいろな背景知識・一般常識にもとづく思考が、必要ない。
5.下した判断について、その理由や過程を詳しく説明する必要がない。
6.多少の誤差・間違いが許され、「正解」を理論的に証明する必要もない。
7.現象自体や「インプットとアウトプットの対応関係」が、時間の経過によってあまり変化しない。
8.物理的な作業における器用さや特殊技能が、必要ない。