今日紹介するのは、誰もが気になる「自分の仕事はなくなってしまうのか」という問いについての、興味深い実証プロジェクトだ。

仕事を1つひとつのタスクに分解してみよう

 ミクロ実証的な1つのアプローチとしては、個々の職業を、その構成要素である各種「作業」レベルに分解して考えてみることができる。たとえば、大学教授という「職業」の人は、大きく分けて、

(A)研究
(B)教育
(C)雑用

 という3種類の活動に時間を使う。そこでたとえば(B)の教育活動を、さらに

(B1)授業内容の立案と作成
(B2)授業そのものの実施
(B3)宿題やテストによる学生の評価
(B4)大学院生の研究へのアドバイス

 ……のように分解し、さらに細かく具体的な「作業」をリストアップすることができる。そして、各「作業」(タスク)について、今後10年間でどのくらい自動化できそうか、その筋の専門家に点数をつけてもらおう。こういう点数を並べれば、「大学教授という職業が何パーセント自動化できそうか」を測る目安くらいにはなりそうだ。

 感覚をつかんでもらうために、もう1つの例として「米国で大手監査法人に勤める会計士(専門分野は税務)」についても、業務内容をざっくりタスク分けしてみよう。

(W)税務申告書の作成
(X)税務申告書の確認
(Y)チームのマネジメント
(Z)クライアントの獲得および関係構築

たとえば末端の仕事である(W)を詳しく見ていくと、

(W1)試算表の勘定科目(の管理コード)を整理して、ソフトに入力
(W2)税務上と会計上では費用・収益の認識が異なるので、違いを計算してソフトに入力
(W3)税控除や繰越欠損金が利用できるか否かを判断する

 といったタスクによって構成されている。もともとこの分野はコンピューターによる処理との相性が良い。だから(W1)や(W2)などはソフトの活用を前提としたタスク設計になっている。とはいえ、たとえば「交際費はその内容によって控除の可否が変化する」といった例外処理も多いため、完全自動化は難しいのだという。

注2 アメリカにおける税務専門の会計士のタスクについては、上武愛季子氏にご教示頂いた。この場を借りて感謝したい。

 この記事の読者も、ためしに自分の仕事のタスク構成を洗い出してみたらどうだろう。AIによる自動化が云々という話以外にも、何か新しい発見があるかもしれない。

 こうした「自動化のしやすさ」を、世の中の多くの職業について数値化したのが、「機械学習と職業の変化」という論文である(原題は「Machine Learning and Occupational Change」)。といっても、今まさに進行中の研究だから、完成版が読めるのはまだ先になりそうだ。