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パーティーグッズにはしたくない

 「今までのパッケージデザインをおしゃれに、きれいに変えるだけなら、デザインのアイデアはたくさんあった。しかし、もっと何かできないかと探っていった」(松尾任人シニアクリエイティブディレクター)。明るい色に変えたり、花柄を打ち出したりすなど、トイレットペーパーのイメージをデザインで変える手段は、たくさんありそうだ。しかしパーティーグッズや面白グッズになりそうなデザインにはしたくなかったという。

 重視した点は「持って歩くと楽しいトイレットペーパー」だった。「我々はパッケージのデザインを作っているのではなく、持って歩くと楽しいという体験を作るにはどうすべきかを考えていた」(宮城氏)。持って歩くと楽しいとは、どういうことか。例えば「高級ブランドのようなデザインにしたらどうか」「抱えて歩くようにすればどうか」など、さまざまな「持って歩くと楽しい」アイデアがあった。最終的には、多くの生活者に共通する体験の記憶と言えそうな、赤ちゃんやラジカセなどのデザインを採用した。これらのデザインは、体験の記憶を引き出し、楽しい思い出をよみがえらせてくれる。しかしパーティーグッズや面白グッズとも違う。ちょうどいいバランスを持ったデザインと言えそうだ。

 本来のトイレットペーパーのパッケージならば、吸収力や肌触り、ダブルやシングルかといった基本機能を訴求するのが当たり前。かつてのマツキヨならば、そうしただろう。しかしmatsukiyoブランドは、今までと違った。15年12月、インターブランドジャパンが赤ちゃんをデザインしたパッケージを作ってプレゼンすると、マツキヨも賛同。街中で持ち歩くことが楽しく、見た人たちの気持ちも明るくなる、といった新しい体験のデザインを採用することに決めた。さらに、他にもどんなデザインで進めていくかなど、具体的なプロジェクトが始動した。

 新しいトイレットペーパーは、マツキヨの考え方や思いを凝縮し、matsukiyoブランドを象徴する商品の一つと言えるだろう。ラジカセとショッピングバッグをデザインした商品は既に全国のマツキヨ(一部店舗を除く)にて発売中。他のデザインについても順次発売する予定だ。

2017年1月に東京・南青山店でテスト配布したときの様子。約300個を用意したがすぐになくなったという。こうした反応から、新しいデザインでも市場に受け入れられると判断した
トイレットペーパーのデザインを手掛けたインターブランドジャパン。左から松尾任人シニアクリエイティブディレクター、ウィリアム・ヴォドゥシェッグCCO、宮城愛彦シニアデザインディレクター

(写真提供/マツモトキヨシホールディングス)

[日経クロストレンド 2018年8月20日付の記事を転載]