全2330文字

マツモトキヨシホールディングスがデザイン面でも評価されている。「matsukiyo」ブランドのトイレットペーパーが海外の有名デザインアワードを相次ぎ受賞したからだ。街中で持ち歩くことが楽しく、見た人の気持ちも明るくなるデザインにして、トイレットペーパーの新たな体験につなげた。製品の機能を訴求しないデザインは、従来のマツモトキヨシでは考えられなかった。

「ペントアワード」や「クリオ賞」「iFデザインアワード」などを受賞した「matsukiyo」ブランドのトイレットペーパー。写真は「ラジカセ」タイプのデザイン

 赤ちゃんや鍛えた腹筋、ラジカセ、野菜の入ったショッピングバッグ……。一見すると何の商品か分からないが、これらはマツモトキヨシホールディングス(HD)のプライベートブランド「matsukiyo」のトイレットペーパーだ。2017年1月に東京・南青山店でテスト配布し、同年9月から全国販売を開始した。

 すると店頭で人気商品となったばかりか、デザインの面でも高く評価された。同年の世界的なパッケージデザイン賞「ペントアワード」のボディ部門で世界最高賞のプラチナ賞を受賞。さらに、世界三大広告賞の一つ「クリオ賞」の銀賞、ドイツの国際デザイン賞「iFデザインアワード」を受賞。18年には英国「D&AD賞」の最高賞であるイエローペンシル賞と、世界三大広告賞の一つ「The One Show」のメリット賞を受賞するなど、5冠を達成している。

体験の記憶がデザインのトリガーに

 このパッケージをマツキヨHDに提案したのは、ブランディング専門会社のインターブランドジャパン。同社のウィリアム・ヴォドゥシェッグCCOは、提案した理由を「20年前のマツキヨはアウトサイダーで、新しいことに臆せずチャレンジしていた。再び楽しくフレンドリーで、わくわくするブランドになる手伝いをしたかった」と語る。トイレットペーパーに着目したのは、店舗でトイレットペーパーを買った女性が持ち帰る際に、中身が見えないように銀色の大きなレジ袋に入れるよう頼んでいる様子を目にしたことだったという。「買った人が喜んで持ち運べるような、楽しくて周りからも注目されるデザインに変えようと思った」(ヴォドゥシェッグ氏)。

 一般的に「優れたデザインとして評価された」となると、「斬新でカッコいいデザイン」「今までにないスタイリッシュなデザイン」と思われがちだ。しかし今回のトイレットペーパーが評価された理由は、単なる外観だけではない。トイレットペーパーに対する消費者のマイナスのイメージを逆手に取り、ポジティブな方向に変えたからだろう。トイレットペーパーは毎日、誰もが使っている必需品だが、トイレットペーパーを街中で持ち歩く姿には、多くの生活者が抵抗を感じていると判断。「トイレットペーパーを持ち帰るのがちょっと気恥ずかしい」と感じている生活者のインサイトに着想を得て、赤ちゃんやラジカセ、ショッピングバッグといったデザインを施した。

 なぜ赤ちゃんやラジカセ、ショッピングバッグといったデザインが生まれたのか。インターブランドジャパンの宮城愛彦シニアデザインディレクターは「昔の楽しい記憶が、今回のデザインのトリガーになった」と言う。インサイトから、インターブランドジャパンのプロジェクトチームはアイデア出しやブレーンストーミングを重ねていき、なぜそのデザインが重要なのか、もっといいアイデアはないかなどを議論していった。だが、単なる外観だけでは違う、何かが欲しかったという。

買った人が喜んで持ち運べるような、楽しくて周りからも注目されるデザインに変えた。写真は「赤ちゃん」タイプと「ショッピング」タイプのデザイン