マツキヨ22年ぶり首位転落の衝撃

 かつてマツキヨは、タレントの山口もえを起用した「なんでも欲しがるマミちゃんシリーズ」や、お笑いタレントのダンディ坂野をいち早く起用したテレビCMを放送するなど、ユニークな広告宣伝活動でブランドの認知度を高めた。併せて、壁一面に商品を積み上げる陳列法や、デジタルサイネージを活用したPOP(店頭販促)を取り入れたマツキヨならではの店舗作りに力を注いだ。記憶に残る宣伝と購買意欲をそそる店作り。この2つによって、若年層を中心にマツキヨの“指名来店”を誘った。

 NB(ナショナルブランド)を中心に取り扱う小売り企業は品ぞろえが似通い、競争優位性を打ち出しにくく価格競争に陥りがちだ。こうした中、「マツキヨ」という強力なブランドを持つことが競合との差異化につながり、企業の成長に大きく貢献したことは疑いようがない。1994年度にコクミン(大阪市)を抜いて業界1位に立ったマツキヨHDは、トップをひた走り続けた。

 ところが16年度に状況が一変する。同年度のマツキヨHDの売上高は5351億円。それまで2位だったウェルシアホールディングスが同6231億円を稼ぎ1位に躍り出た。相次ぐ企業買収による規模拡大によって、連結売上高でマツキヨHDを上回った。マツキヨHDが首位を明け渡すのは実に22年ぶりのことだった。それだけにとどまらない。3位だったツルハホールディングス(同5770億円)にも抜かれ、マツキヨHDは一気に3位に転落する格好となった。17年度にはサンドラッグにも抜かれ、ついには表彰台から転げ落ちた。

マツモトキヨシホールディングスは、2017年度の売上高で4位に転落した
マツモトキヨシホールディングスは、2017年度の売上高で4位に転落した
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 予見はあった。常務取締役の松本氏は以前から「マツキヨらしさの指標である、『革新性』や『卓越性』という点に課題がある」ことに強い危機感を覚えていた。食品を取り扱うドラッグストア企業が増え、コンビニエンスストア化が進む中で、消費者が店舗を選ぶ基準が品ぞろえや価格に移り変わっていった。小売りは業界を超えて同質化が進む。「入店したら、偶然マツキヨだった」という消費者の声も聞かれた。マツキヨは“普通”のドラッグストアとして粛々と事業を展開するにとどまり、かつての斬新で、楽しくて、来店でわくわくするブランドとは程遠い存在になってしまった。

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