結論から言うと、少なくとも日本でICOは普及しないと考えている。以下、3つの理由を説明したい。

 1つ目はプロジェクト内容のずさんさ。ICOは本来「事業を立ち上げたい」「新しく店舗を出したい」など、企業の事業計画を実現するために行われるものだ。その事業計画書、IPOで目論見書に当たるものが「ホワイトペーパー」だ。集めた資金を何に使うか、計画を具体的にどのような手順で進めるかが書かれている。

 無数のICOがあるので全てに目を通せているわけではないが、特に大きな額を集めているICOについて内容を精査した。その結果、いつまでたっても商品開発に着手しないもの、ホワイトペーパーに「この部分に新しい技術を使う。使い方は今後考える」のような曖昧な表現が含まれるものが散見された。

 開発者がお金を集めたまま逃げてしまうケースもある。素晴らしい計画を掲げているプロジェクトももちろんあるが、それをどうやって実現するのか、当局から許可は得ているのかなど、肝心なことが書かれていないものが目立つ。

 ICOによる資金調達額をプロジェクトの目的別に分類した(92ページの円グラフ参照)。44.2%と半分近くを占めるのが「インフラ」だ。道路や橋を造るのかと思いきやそうではない。これは他者のICOをサポートするためにシステムや基盤を整備するというものだ。

 つまり、他のICOを増やすために仮想通貨を発行しているプロジェクトが半分近くもある。当然、この段階では目に見える商品やサービスは何も生まれていない。現状では、ICOの半分がイノベーションを生み出す役割を担っていないのだ。

 2つ目は1つ目にも関係するが、ICOが簡単にお金を生み出す「打ち出の小づち」になっていること。トークンの発行は、やり方を調べれば誰でも簡単にできる。ホワイトペーパーによって、世間に対し約束をしているように見えるが、これも会社法や金融商品取引法にのっとった公式なものでない。ホワイトペーパーには何ら法的拘束力がなく、単なる“宣言”でしかないのだ。

 IPOやVCによる資金調達であれば、プロジェクトの実現性は厳しく検証される。もし今あるICOプロジェクトをIPOの尺度で審査したら、通るものはほとんどないだろう。

 起業には多大な労力とカネが必要となる。それでも起業家が頑張るのは、社会を良くしたいというモチベーションがあるからだ。安易に大金が手に入るICOは、起業へのモチベーションを破壊しかねない。そう考えているからこそ、中国政府はICOを全面禁止する措置に打って出たのだろう。ICOを放置したままでは、新興企業の育成にマイナスとなる。

 3つ目は、ICOに投資する側が著しく不利な状況に置かれていること。それでもこの盛り上がりを支えているものは何だろうか。