(日経ビジネス2017年8月21日号より転載)

檜山 敦
東京大学先端科学技術研究センター 講師
[ひやま・あつし]2006年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。16年より現職。著書に『超高齢社会2.0 クラウド時代の働き方革命』がある。
今や60歳以降も働き続ける人は増えている(写真=時事通信)

 我が国は人口減少の中で社会の高齢化がさらに進むことになる。すでに若年層は、不安定な就労環境に加えて、育児、介護などを含めギリギリの負担を強いられている。下の左のグラフは2055年に予想される年代別の人口構成である。逆ピラミッド型になり、ほぼ1人の現役世代が1人のシニアを支えねばならない状況になる。

 現行の社会の仕組みでは65歳以上のシニア層は支えられる存在として位置づけられている。しかし、実態として65歳以上の9割近くは自立した生活を営む元気なシニアである。また、定年後の社会との断絶はシニアの心身の健康を急速に衰えさせる要因となっている。

高齢者活用は社会の負担を軽減する
●2055年の日本の人口ピラミッド
出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(2017年推計)」。出生中位・死亡中位仮定による推計結果

シニア活用でGDP23.6兆円増

 シニア就労は、社会の負担を軽減し、シニア自身の健康増進に寄与することから、その開拓は社会的要請ともいえる。超高齢化社会の議論では、「いかにして若者が高齢者を支えるか」ばかりに焦点が当たるが、発想を転換して、「高齢者が若者を支える社会」と捉え直してはどうだろうか。

 おそらく現行の社会モデルのまま安定していられる20年ごろまでにシニア就労を促進する新たな社会制度と価値観の転換を図れば、安定した社会を構築することも可能であろう。多数を占めるシニアがマイノリティーの若い世代を支援する形にできれば、下の右のグラフのように人口ピラミッドをバーチャルに逆転させられる。

 非常に粗い試算ではあるが、就労を希望している未就労のシニア約800万人が、1人あたりのGDP(国内総生産)を生み出せば、日本全体ではおよそ23兆6000億円のGDPの拡大につながる。これは我が国の情報産業の規模に匹敵する。仮にほんの数%だけの達成にとどまったとしても、社会的には大きなインパクトになり得る。