海洋汚染のもとになる「マイクロプラスチック」を規制する機運が、世界中で高まっている。海洋への流出抑制を強化し、官民挙げて回収・再生の好循環をつくりだすことが必要だ。

(日経ビジネス2018年10月8日号より転載)

古木 二郎[ふるき・じろう]
三菱総合研究所
主席研究員
1994年広島大学大学院修了、三菱総合研究所入社。専門は廃棄物やバイオマス政策。自治体の廃棄物処理システムや容器包装リサイクルなど循環型社会の構築法を研究。
(写真=AFP/アフロ)
(写真=AFP/アフロ)
<span class="fontBold">スターバックス(上)とマクドナルドはプラスチック製ストローの使用をやめる。(写真=AAP Image/アフロ)
スターバックス(上)とマクドナルドはプラスチック製ストローの使用をやめる。(写真=AAP Image/アフロ)
<span class="fontBold">紙製に注目が集まる</span>(写真=読売新聞/アフロ)
紙製に注目が集まる(写真=読売新聞/アフロ)

 今年6月、米マクドナルドが英国とアイルランドの店舗でストローをプラスチック製から紙製に切り替えると発表した。7月には、米スターバックスもプラスチック製の使い捨てストローの使用を2020年までに世界中の店舗で全廃すると発表。国内でもすかいらーくホールディングスが20年までにストローの使用を全廃する。こうした動きの背景には、深刻な海洋汚染のもとになる「マイクロプラスチック」を規制しようとの機運が高まってきたことがある。

 今年6月にカナダ・シャルルボワで開かれた主要7カ国(G7)首脳会議で、30年までの代替品への切り替えなどをうたう「海洋プラスチック憲章」がまとめられ、日本と米国以外が署名した。欧州連合(EU)が使い捨てプラスチックの使用規制を盛り込んだ法案を提出するなど、規制の動きが具体化している。

海洋生物が破片を摂取

 マイクロプラスチックとは、5mm以下のプラスチックを指す。レジ袋やカップ、ストローなど様々なプラスチック製品が、紫外線や熱、波などによって砕けて細かくなることで発生する。海洋に流れ込んだマイクロプラスチックに有害物質が付着し、それを摂取した魚や鳥などの生物を通じて人体に入る恐れがある。

 日本は今回、G7で憲章に署名しなかった。産業界と調整ができていなかったことなどが理由とされている。だが6月には、プラスチック類の海への流出抑制を盛り込んだ改正海岸漂着物処理推進法が成立した。今年度中にはプラスチック資源循環戦略を策定し、19年に大阪で開かれるG20サミットで、途上国を巻き込んだマイクロプラスチック対策を議論する見通しだ。

世界各国で問題化してきた
●マイクロプラスチックに関する規制の動き
国・地域内容
欧州連合
(EU)
2018年5月、ストローやスプーン、フォーク、皿などの使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する規則を提案。別の素材を使った代替品に切り替えるよう義務付け。19年5月までに欧州議会とEU加盟国の承認を得て21年の実施を目指す
日本2018年6月、改正海岸漂着物処理推進法が成立。事業者に対し、使用後河川などに排出されるマイクロプラスチックが抑制されるよう努力する義務を課す
インド2018年6月、モディ首相が2022年までに使い捨てプラスチック製品を廃止すると宣言
英国2018年4月、使い捨てのプラスチック製ストローやマドラー、プラスチック芯の綿棒の販売禁止方針を表明。早ければ19年に施行

 具体的な規制を先んじて打ち出した欧州で企業の動きが活発化しているが、日本でも前述のすかいらーくをはじめとして、プラスチック製ストローの利用をやめる企業はどんどん出てくるだろう。紙製のほか、時間の経過で分解される生分解性プラスチックを使った製品の需要も高まると予測される。

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