フリマアプリが日本で初めて登場したのは12年ごろとされる。誕生からわずか5年の間に、5000億円規模の巨大市場が形成されたことになる。

 個社の実績をみても、その勢いは明らかだ。18年6月に東京証券取引所マザーズへの上場を果たしたメルカリの場合、月間利用者数は1075万人。1カ月に売買される金額は300億円を超える。楽天もフリマアプリの草分け的存在だった「フリル」の運営会社を16年に買収。自社サービスの「ラクマ」と統合し、メルカリを追い上げる。

 こうした状況で生まれつつあるのが、「手元にあるモノを売る」習慣が定着するなかで、「売るときのことを考えてモノを買う」「買ってもらえるうちに売る」といった新たな消費のスタイルだ。

転売意識した商品戦略を

 若い世代の間では、店頭で商品を購入するとき、手元のスマホでフリマアプリを開き「いくらで売れる商品なのか」を確認する習慣が広がっているという。従来、1万円の商品を買うことは1万円の支出を意味した。だがフリマアプリの登場で、5000円で売れる見込みのある商品と分かっていれば、その商品は実質的には5000円で買えることになる。

 「ブランド品」の定義もフリマアプリの浸透によって変化しそうだ。従来、日本でブランド品というと、欧米を発祥とした、長年の伝統を誇る高級品を指すことが多かった。商品に独自のロゴが施され、ステータスとして対外的に示せる「ブランド品」だ。

 フリマアプリでもブランド品は取引されているが、今後は、高級品であることだけが「ブランド品」ではなくなる。例えばユニクロ。欧米発でもなければ高級路線でもなく、所有自体はステータスになり得ない。だがフリマアプリで検索するとTシャツからデニムまで、ユニクロ商品が多数出品されている。消費者が「ユニクロなら一定の品質や機能性が期待できる」と考え、中古でも購入するからだ。

 すなわち、「フリマアプリで売れること」が購入基準の一つになる場合、商品の認知度や普及度、そこから生まれる信頼感も重視される。サイズや質感に対して消費者のあいだで共通認識があり、店頭で手に取らなくてもおおよそ商品の概要が分かるものが、より支持されるのだ。

 「売ることを考えて買う」という消費行動は、これまでも不動産のほか、自動車など資産性の高い耐久消費財ではみられたものだ。だが、こうした商品は高額であるものがほとんど。日々の消費活動の隅々にまで「売ることを考えて買う」ことが浸透していたわけではなかった。

 だが、IT(情報技術)の進化が個人にも浸透することで、個人間をつなぐ基盤が整ってきた。その結果、個人が所有するモノを有効利用する、遊休資産を有効活用する、という価値観の土壌が育ってきたことは、日本の消費社会の成熟を映しているといえる。

 経産省資料によると、中古品の購入・販売意向が高いのは、女性向けファッションのほか、インテリア、書籍・映像などのコンテンツ商品が中心だ。これらの分野を手掛ける企業は、今後ますますフリマアプリの存在を考慮した戦略立案が求められるだろう。

コンテンツ商品を中心に関心が高い
●商品ジャンル別にみた中古品に対する消費者意識
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出所:経済産業省資料より筆者作成
注:売買の経験は過去1年間を対象に聞いている
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(構成=藤村 広平)

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