中古品市場の普及に伴い、スマートフォンのフリマアプリが存在感を増している。消費者が「売ることを考えて買う」時代には、企業にも従来とは異なる商品戦略が求められる。
(日経ビジネス2018年10月1日号より転載)

ニッセイ基礎研究所
生活研究部
主任研究員
主に個人がインターネットを通じてモノや場所を共有(シェア)するシェアリングエコノミー(シェア経済)が、日本で急成長している。内閣府が7月に公表した試算によると、2016年の市場規模は4700億〜5250億円だった。
シェア経済市場のうち、民泊や駐車場などスペースのシェアが占めるのは1400億〜1800億円。単発で仕事を受注する、家事代行やイラスト制作などの形でサービスを提供するスキルのシェアは150億〜250億円。ネットの仲介業者を通じてスペースやスキルをシェアする働き方を米国ではギグ・エコノミー(Gig Economy)と呼び、配車サービスの「ウーバー」の運転手、便利屋サービスの提供など、新たな非正規の就労形態として急速に成長している。
これら「サービス」のシェアに対し、日本においては、フリマアプリ経由を中心とした「モノ」のシェアが3000億円と最大で、存在感が大きい。
「捨てるのはもったいない」
長い間、新品志向が強かった日本でも、リサイクルショップや古本ショップチェーンの台頭にもみられるように、中古品流通のプラットフォームが少しずつ出来上がってきた。この延長線上にあるのがシェア経済だ。長らく続いた景気低迷のなか、消費者が中古品に手を出すのは節約のためと理解されてきた。だが経済産業省の報告書に盛り込まれたアンケート調査によると、フリマアプリを使ってモノを売る理由として回答が最も多かったのは「捨てるのがもったいないから」だった。「お小遣い稼ぎのため」「手持ちのお金が欲しいから」との回答もある。だが、それ以上に目立つのは「物の有効活用をしたい」「誰かにもらってほしい」といった、節約とは直結しない意識だ。
フリマアプリは消費者同士が直接モノを売買するサービスだが、その成長のスピードは目を見張るものがある。経産省の「電子商取引に関する市場調査」によると、16年に3052億円だったフリマアプリの推定市場規模は、17年には4835億円まで伸びている。

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