一方、現場主導アプローチでは、業務をより簡単に自動化できるというRPAの強みを生かしやすい。実務を知るユーザー部門が自らの判断で作業を「ロボット化」するため、導入・展開のスピードが速い。開発コストも抑えられるので、従来のIT投資の考え方であれば投資対効果が割に合わない程度の小さな業務の自動化も期待できる。

 シンプルな業務であれば数時間程度の作業で自動化できるので、年に1週間程度しか発生しない単発業務であってもRPAの適用対象になり得る。現場課題を最も理解している現場自身の創意工夫によって業務改善が企画・推進されるメリットも大きい。2つの導入アプローチのどちらが正解ということではなく、適用業務の規模やリスク特性に応じて組み合わせたり、使い分けされたりしているのが実情だ。

 現場主導のアプローチでは、増え続けるロボット化の統制が不可欠だ。RPAで自動化できる操作は多岐にわたり、設定するユーザーの権限によって基幹システムにデータを書き込むことも、社内の機密情報にアクセスすることもできる。自動化のミスが会社に重大な影響を与えるようなことがないよう、しばらくは人間による操作と併用して同じ結果が出るかどうか確認したり、確定処理は自動化せずに人間が確認・実行したりといった対策が必要だ。

 RPAは年間数十万円程度で導入できる製品もあり、ユーザー部署の予算の範囲内で導入決裁ができるが、無秩序な導入が進むと思わぬリスクを引き起こす可能性がある。導入ルールや利用のガイドラインなどの整備が必要だ。ただし、過剰にリスク面を強調してルールで縛り付ければユーザーは萎縮してしまい、省人化の効果が広がらない。RPAを導入した意味すらも消失してしまうため、統制策は必要最小限に抑える意識も重要だ。

必要なのは現場の意識改革

 RPA導入に際して、見落としがちな視点がある。現場に、業務の生産性や品質の向上が必要という差し迫った危機感がないと役に立たないということだ。現場自身にRPAを使う強い動機がなければ、現状の変更が必要な自動化は厄介事であるため、少しのトラブルや不安でRPAが撤去されかねない。

 まずは経営者が自社の戦略・方針を実現させるストーリーに基づいて、業務改革の必要性と目標を現場と共有することだ。業務改革を後押しするインセンティブを提示するなど、経営者による変革実現のための一貫した行動が、現場の意識を変えるのに重要になる。

 ロボットの開発スキル習得を、組織として評価する制度や施策も必要だ。RPAはなるべく簡単にロボット開発ができるように作られているが、誰でもすぐに使えるわけではない。一定の人選や学習が必要だが、そのスキル習得に組織的な推奨や報奨がなければ挑戦するモチベーションを高めにくい。今後ますます重要となるデジタルトランスフォーメーションの重要な担い手となる人材やスキル習得の意欲がある人材を、組織として厚遇する人事施策や企業文化の醸成が欠かせない。

 このように、RPAの特徴を生かした業務改革を進めるには、従来のIT活用とは異なる意識や仕掛けが必要だ。放っておけば無秩序に導入が進み、後から秩序を取り戻そうとしても困難な事態に陥りかねない。また、逆に現場の評判が悪く、RPA適用展開が遅々として進まず、付加価値の低い仕事に貴重な人的リソースが投入され続けることにもなりかねない。

 現場自身の着想と工夫を生かしながらデジタルトランスフォーメーションを実現するための推進力となるのは、実は会社方針や組織体制・文化などのアナログな経営基盤である。

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●RPA導入ケースの分類
出所:知的資産創造2017年12月号を基に作成

(構成=広田 望)