北欧では、労働者が学び直しやすい
●デンマーク、スウェーデンの支援制度の特徴

1教育訓練のための休暇を取得できる。その間の賃金も保障される
2在職者でも職業訓練を受けられる
3企業が職業訓練プログラム作成に参画し、時代のニーズに即したものを提供する

 支援制度の特徴は3つある(左の表を参照)。1つ目は、教育訓練を受けるための休暇を取得できることだ。例えばデンマークでは、一定の条件はあるものの、年間14日の有給教育休暇が取得できるうえ、訓練の費用は雇用者が負担する。国際労働機関(ILO)有給教育休暇に関する条約を批准しているスウェーデンでは、職場復帰後は最低でも休職前と同じ賃金と処遇が保障されている。日本の産前産後休暇や育児休業に近いイメージだ。

 また、在職中か否かにかかわらず受講できるのも特徴だ。スウェーデンでは無料。デンマークの場合は有料だが、就業者の場合は企業負担、失業者は受講料免除のため、実質無料といえる。

 さらに、プログラムも企業ニーズに合致させている。両国では、企業や産業界もプログラムを評価し、必要な場合には改廃している。毎年、スウェーデンでは4割、デンマークでは1割弱が入れ替わるなど新陳代謝がよい。

 以上を踏まえ、日本が取るべき策を考える。まずは北欧同様、能力開発を労働者の権利としたうえで、現行の制度を労働者にとって使いやすくすべきである。就労状態にかかわらず、希望する人が利用できるようにする。

支援の重複解消で財源確保

 また、制度の重複を解消することも重要だ。現状では、生活困窮者、求職者、在職者にそれぞれ別々の支援がなされているが、重複もある。これを一本化する。就労状態による区分ではなく、基礎、中級、専門コースといったレベル別の区分にすれば、自分に合ったコースを受講できる。

 さらに、支援プログラムの評価に企業や産業界が参画し、プログラムを企業ニーズに合致させることも必要だ。地域ごとに求められる知識やスキルが様々であることを考えれば、経済圏ごとに実施する選択肢もあろう。

 最後に筆者が提案したいのが、「正規雇用を保障する教育訓練制度」の構築だ。下の図のように、企業とハローワークが、「受講者が既定のプログラムを期限内に修了した場合に正規雇用する協定」を結ぶことで、非正規労働者のスキルアップと就職を保障する。企業の参加を促すため、税制優遇措置なども検討すべきだ。

訓練終了後に正規雇用を保障
●著者が考える教育訓練システム

注:日本総研作成の図を基に編集部作成

 「財源はどう確保するのか」という意見もあるだろう。実は、現状の支援制度はそれぞれ他の制度と重複している部分も多い。省内の複数の局が似たような制度を提供しているからだ。縦割りを見直せば、財源は確保できる。

 労働人口が減少する中で中高年の非正規労働者を放置すれば、彼らはいずれ生活に困窮する高齢者となり、社会保障費が増大する。

 また、世界中で技術革新が進み国際競争が激しくなる中では一人ひとりが学び、スキルを伸ばすことが不可欠だ。とりわけ層の厚い「正規で働く意志がありながら放置されている非正規中高年層」がスキルアップできれば、社会全体への貢献も大きい。

(構成=白井 咲貴)