男性の4人に1人は生涯未婚

 この完結出生児数は、ほぼ2前後で推移している。つまり結婚して婚姻が継続した夫婦からは、人口を維持できる水準(2.07)に近い子供が生まれているのである。

 ではなぜ、合計特殊出生率が低くなるのか。この出生率は、簡単に説明すると子供の出生数/(15~49歳の既婚+未婚女性数)で算出する各年齢の出生率の積み上げ結果である。日本の場合、ほとんどの子供は夫婦間で生まれていることを考え合わせると、同出生率の分子になる子供の数はほぼ既婚女性が産んでいることになる。

 ということは少子化に大きく影響しているのは未婚女性の増大、つまり未婚化や晩婚化といえる。ところが、現状は待機児童対策など子育て支援に集中している。もちろんこれらが大事なのは言うまでもないが、未婚化や晩婚化という問題への対策があまりに手薄ではないだろうか。

 右下のグラフは男女別生涯未婚率(50歳時点婚歴なし率)の推移である。1990年代以降、特に2000年ごろから急速に高まってきた。特に男性は15年時点で約4人に1人に達している。女性も14%が未婚となっている。

 ただし、一部の自治体で実施しているような「婚活パーティー」を活発化して結婚を増やせばいいといった単純なものではない。この未婚化や晩婚化の背景にはもっと複雑な変化がある。それを見据えた対策が必要なのだ。

 例えば、あまり知られていないが、今の婚姻カップルの4組に1組は、どちらかあるいは双方が再婚となっている。「再婚」カップルはもはや結婚の主要な形態の一つなのだ。

増える「男性再婚・女性初婚」

 この中で最も多いのは男性が再婚・女性が初婚のカップルで全体の9.7%。次いで男女とも再婚の9%、女性側が再婚の6.9%となっている。ここで注目すべきは、1990年代後半あたりから「男性再婚・女性初婚」というケースが急速に増えていることだ。

 これは男性の未婚率上昇の時期と重なる。すべてではないが、一人の男性が繰り返し結婚することが未婚男性の増加につながっている可能性があるだろう。さらに細かく見ると、男性再婚・女性初婚カップルの44%は夫が7歳以上年上のいわゆる「年の差婚」である。年の差婚自体は減少してきているが、この組み合わせではなお半数近い。

2000年ごろから未婚率が急速に高まってきた
●男女の生涯未婚率の推移
出所:ニッセイ基礎研究所の資料を基に本誌作成
再婚で初婚女性と結婚する男性も増えている
●「夫のみ再婚」の結婚組数の推移
出所:ニッセイ基礎研究所の資料を基に本誌作成

 年の差婚は2つの面で出産に影響する可能性がある。一つは女性が男性との結婚を待って晩婚化し、出産が遅れる可能性があること。もう一つは男性が高齢化し、女性が若くても子供を授からなくなる可能性だ。男性は35歳を分岐点に「妊娠させる力が衰えるグループ」と「そうでないグループ」に分かれるとの研究もある。結婚形態の変化も出生率に影響しているのだ。

 繰り返しだが、これがすべてではない。例えば地方は長い間、工場など男性中心の職場を増やす産業政策がとられてきた。跡継ぎとなる長男を地元に残したがる風潮も強い。一方女性は、相対的にサービス産業への就職が多く、その比率の高い大都会へ動きやすい。東京だけではない。福岡市や札幌市などの中核都市は特にそうだ。よくいわれる高学歴女性の都会への転出という問題だけではないのである。地域にも職場にも男女のアンバランスが生じやすい環境が長く続いているのだ。

 地域から女性の母数が減少すれば、そこでの出生率が多少上昇しても子供は減る。一方で東京は出生率が全国最低でも子供の数は15年以上増えている。地方から女性が流入するからだ。

 対策は簡単ではない。年の差婚を止めることはできないが、あえて言えば最近の社会全体にある「20代は結婚するには若い」といった風潮を改める必要だ。これは欧米では見られないものだ。出生率の向上に、20代での出産を増やすことが重要なのは統計的に明らか。学校教育の段階から何らかの形で男女の年齢上昇に伴うリスクを教えるべきではないか。

 地方は男性中心の産業政策を見直す必要がある。例えば、女性が好きな仕事で月数万円から稼げるミニ起業を進めようという動きが山形県鶴岡市などに出ている。農水産業は機械化を含め、体力がない人も入職をしやすくするよう自治体が支援するのも手だ。大都会に出なくても、地方で若い女性が働ける場をもっと増やしていくことが大切だろう。政府や地方自治体は、問題を正確に認識した対策を、きめ細かく、切れ目なく打つ必要があるはずだ。

(構成=田村 賢司)