働き方改革の必要性が一層高まる中、企業は効果的な対策を打ち出せずにいる。全社員に一律に行うのではなく、従業員の意思決定の「クセ」を利用した働き方改革が必要だ。
(日経ビジネス2018年7月2日号より転載)

滋賀大学
データサイエンス教育研究センター助教
先日、生産ラインの不良品を検証する事案があった。様々なデータを組み合わせて分析したところ、不良品の発生データと生産ラインの機械の温度が関連していると分かった。詳細な理由はすぐには分からないが、善後策として、温度上昇を感じたらすぐ機械をメンテナンスして温度上昇を防いだところ、不良品の発生を減らすことができた。
異なる種類のデータを必要に応じて組み合わせ、解釈をして、素早く正しい意思決定をするための根拠を作り出す。そうした業務を担う人材として期待が高まっているのが「データサイエンティスト」という職種だ。
データサイエンティストが担い得る業務は以下の通りになる。
まず社内のビジネスが抱える課題を分析し、解決するための社内外のデータを収集する。他の部署からデータを提供してもらうためのコミュニケーションも欠かせない。集まったデータは分析に使えるような形に加工したうえ(この作業を「研磨」と呼ぶ)、IT(情報技術)システムを使って統計分析する。データ量が多ければサーバーやストレージを増強したり分散処理させたりといった、ITの環境づくりをする。結果が出たら解釈し、課題解決のための実行プランを作成する──といったものだ。実に広範なスキルが必要である。
またデータサイエンティスト協会では、データサイエンティストに必要なスキルとして、①ビジネス課題を抽出、解決する「ビジネス力」②最新の分析手法を採り入れたりAI(人工知能)の論理展開を考えたりする「データサイエンス力」③分析の仕組みをシステムに実装する「データエンジニアリング力」──の3つを核として掲げている。
●データサイエンティスト協会が定める3つのスキル

これまで企業には、個々の能力は高くても、3つのスキルすべてを兼ね備えている人材はあまりいなかった。例えば統計の専門家はデータサイエンス力があるが、生産現場などの細かい作業には詳しくないこともある。経営企画部門の社員は、ビジネス全体の構想力はあっても、データエンジニアリング力は高くないかもしれない。
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