残業削減効果10時間以上も

 A社の働き方改革は大きく2点。まず、月の残業時間の上限目標を45時間に定め、それ以上の残業には重役の承認を必須にした。次に、自宅やカフェなど、場所を選ばずに働けるようにし、完全フレックスタイム制を導入した。

 働き方改革によって残業時間の削減効果が特に高かったのは、子供の頃に夏休みの宿題を後回しにしていた人だった。この傾向を持つ人はもともと残業時間が多かったのだろう。さらに、平等主義者や周りを妬む人も働き方改革前から残業が多い傾向にあり、改革による残業削減効果が高かった。

 会社全体では平均2.3時間の残業が削減できたが、もともと45時間以上残業していた上記のような人たちでは4.7時間短縮することができた。特に、働き方改革実施前に50%以上の月で45時間以上残業していた人では、11.8時間も削減効果があった。

従業員の多くは働き方改革に不満
●働き方改革の実施率の推移とその効果
出所:デロイトトーマツコンサルティング「働き方改革の実態調査2017」

 宿題を後回しにする傾向がある人は、時間当たりの生産性が低い可能性がある。例えば1時間でできる仕事を先延ばしして、2時間かけているかもしれない。逆に、夏休みの宿題を計画より前倒しで進めていた人ほど残業時間の上限である45時間を超えることは少なく、総残業時間も短い傾向にあった。

 もちろん、後回し傾向のある人も、仕事の進め方を計画した段階ではその通りに進めるつもりでいただろう。ところが、実際には、まだ計画に余裕があるからと、定時の就業時間中には本来すべき仕事を先延ばしし、他の重要でない仕事をした結果、残業をしなければ仕事の締め切りに間に合わない事態に陥ったと考えられる。

 この悪循環を防ぐには、計画を立てた段階でその計画を変更しにくくするという方法(コミットメント)がある。月初めに決めた有給休暇を動かせない、短い期間に区切って締め切りを設定するなどの工夫だ。

 この他、残業が多い社員に対しては、「あなたは他の社員よりもずっと多く残業しています」といったメールを送ることも有効だ。平等主義者なら「他の人に合わせて自分も残業を減らそう」と考え、周りを妬む人なら「自分だけ残業するのは損だから減らそう」と考えるはずだからだ。