中高年の復職支援も重要に
●年齢階層別の就業看護職員数
出所:厚生労働省の統計を基に日本看護協会がまとめた

 15年10月には、看護職の資格を持ちながら就業していない“潜在看護職”の復職を支援するための法改正があり、看護職の免許保有者は離職時などに各都道府県に設置された「ナースセンター」に届け出ることが努力義務となった。また、ナースセンターは無料職業紹介事業所として職業紹介(あっせん)のほか、再就業の相談や復職支援研修を実施し、離職防止や潜在化予防に取り組んでいる。

 看護職の就業実態に関しては2年に1度の把握にとどまっており、届け出も努力義務である。そのため潜在看護職の正確な人数は把握できないが、厚労省によれば10年末時点で約71万人に上ると推計されている。これは看護系の免許保有者の約3分の1に当たる。

 ナースセンターへの届け出数は、制度の認知度向上に伴い月2000人ほどのペースで増えている。16年度の求職者は約6万7000人、常勤の求人倍率は2.71倍に上った。都道府県ナースセンターでは、子育てのため離職中の看護職が気軽に情報交換できるカフェ形式のイベントを実施している。

医療・介護の“ハブ”に

 かねて看護職の確保・定着は課題だったわけだが、06年4月、重症患者を受け入れる高度急性期病院を整備するため、患者7人につき看護職1人を配置する病院への診療報酬が手厚くなったことで看護職不足に拍車がかかった。大病院がこれに対応しようとしたために、看護職の“奪い合い”が起きたのだ。

 短時間正職員制度の導入などによって、家庭の事情で働き方に制約がある看護職も働き続けられるようになり、深刻な状況からは脱したものの、高齢化に伴う医療・介護のニーズは増え続けている。厚労省の推計によれば65歳以上の高齢者数は42年に3878万人とピークに達する見込みだ。

 国は高齢者が最後まで住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう「地域包括ケアシステム」の構築を進めており、在宅医療・介護において看護職が果たす役割はますます大きくなっている。具体的には、患者が入退院する際に病院と自宅で受けられる治療内容や生活スタイルが大きく変わらないように調整したり、患者にとって最適な介護サービスを医師に提案したりするなど、地域における医療・介護・福祉の“ハブ”として機能することが期待される。

訪問看護や介護で高まる需要
●施設種類別の求人数、求職者数、求人倍率
出所:日本看護協会「2016年度ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人に関する分析報告書」

 ナースセンターへの求人登録施設と求職者の関係(上図)を見ても、自宅で療養生活を送る人を対象に、医師と連携しながら看護サービスを提供する「訪問看護ステーション」の求人倍率が3.69倍と最も高く、前年の2.22倍から大きく増加していた。医療・介護の効率化を図り社会保障費の増大を抑えるうえでも、70万人を超える潜在看護職を活用しない手はない。

 看護職の高齢化も進んでいる。ナースセンター登録データの集計では、60歳以上の求職者は1割近くに上り、近年増加傾向にある。

 もっとも、こうしたニーズや人口構成の変化に応じて、より多くの看護職が無理なく活躍できるようにするためには、看護職本人の労働環境を整備するだけでなく、看護職の家族、ひいては社会の理解が不可欠だ。

 冒頭で述べたように、看護職は基本的に夜勤・当直が求められる。日本看護協会が17年に実施した看護職員実態調査の結果では、8割以上が夜勤のある職場で働いていたが、その一部は「日勤のみ」という勤務形態を選んでいた。夜勤を可能にする条件として最も多かったのは「家族(配偶者)の理解・協力が得られる」(40.1%)であり、「夜勤手当が高い」(28.9%)を上回っていた。

 日本看護協会としてもこの実態を重く受け止め、今年度以降、看護職本人のワーク・ライフ・バランスだけでなく、看護職の家族への啓発や、看護職の配偶者が勤務する一般企業の協力を促す施策も講じていきたいと考えている。

 こうして見ていくと、看護職は日本の働き方改革の最先端を行っているともいえる。潜在看護職の活躍に多くの国民が関心を持つことは、地域の医療・介護を良くするだけでなく、国民一人ひとりが生き生きと働ける社会につながるのではないだろうか。

(構成=内海 真希)