担い手の大半が女性で、夜勤がある看護業界では、古くから働き方改革に取り組んできた。医療・介護の需要が拡大する中、70万人を超える“潜在看護職”の活用の機運が高まっている。

(日経ビジネス2018年6月11日号より転載)

熊谷 雅美[くまがい・まさみ]
日本看護協会
常任理事

済生会横浜市東部病院副院長兼看護部長などを経て2017年より現職。看護職の新人研修や医療従事者の働き方などに関する様々な厚生労働省委員会の委員を歴任。

 近年、政府の旗振りの下、多くの企業が進める「働き方改革」。看護業界では10年以上前から取り組んでいる大きな課題だ。背景には看護職に従事する人材や業務内容の様々な特性がある。

 まず、看護職には女性が圧倒的に多い。厚生労働省によると、看護師、准看護師、保健師、助産師として病院・診療所や介護施設などに勤務している看護職員は約156万人(2016年)で、9割以上を女性が占める。結婚や出産、子育て、親の介護といったライフイベントを契機とする離職が起こりやすい。

 医療は24時間365日、休みなく必要とされるサービスだ。そのため、入院病床を持つ病院を中心に、看護職は日勤と夜勤の交代制勤務が基本となる。経験を積むほど技能を習熟できる一方で、夜勤を含む業務の身体的負担は加齢に伴い大きくなる。

確保・定着はかねての課題
●看護職の特性
  • 9割以上が女性
  • 夜勤・交代制
  • 身体的負担が大きい
  • 在宅勤務できない
  • スキルアップには「経験年数」が重要
(写真=Opus/a.collectionRF/amanaimages)

労働環境の整備が重要

 こうした特性から、看護職が長く働き続けたり、いったん離職した看護職が復職したりするためには、労働環境の整備が極めて重要だ。実際、国は1992年、看護職の人材確保の促進に関する法律を制定。職能団体である日本看護協会も様々な対策を講じてきた。

 例えば、管理者や看護職本人を対象とした夜勤・交代制勤務の指針(ガイドライン)を2013年に策定したほか、病院で働く看護職の職務・能力に応じた賃金体系モデルも作成している。

 常勤看護職の離職率はここ数年11%前後で安定していることから、看護職の労働環境改善策は一定の効果を上げているといえるだろう。