多くの日本企業で採用基準が曖昧であることが、人材のミスマッチや早期退職の原因になっている。自社が求める人物像を明確にしなければ、売り手市場で人手の確保もままならなくなる。

(日経ビジネス2018年3月12日号より転載)

服部 泰宏[はっとり・やすひろ]
神戸大学大学院
経営学研究科
准教授

1980年神奈川県生まれ。2009年神戸大学大学院経営学研究科修了。13年から横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授。18年4月から現職。

 2019年4月入社の学生を対象にした就職活動が3月から本格的に始まった。人手不足を背景に、日本企業における新卒採用は年々重要性を増している。だが、多くの日本企業ではいまだに採用基準が曖昧で、その弊害が企業の成長力低下をまねいている。

 そこで私は、人材の採用にもっと科学的なアプローチを採り入れるべきだと考え、「採用学」を提唱している。以前にも増して、自社にマッチした人材を確保するのが難しいと感じている企業は少なくないはずだ。その原因を少子化や学生の勉強不足などに求めても建設的とは言えない。企業側が変われば、優秀な人材は採用できる。

すぐ辞める原因は企業にあり

曖昧な採用基準が多い
●2018年4月入社の採用選考で特に重視した点(上位5項目)
(写真=アフロ)

 日本では、新卒・中途を問わず採用基準を明確に示している企業は多くない。経団連が企業の採用担当者に対して実施した調査でも、採用で重視する項目には「コミュニケーション能力」「主体性」「チャレンジ精神」など、抽象的な内容が上位を占める。

 これでは採用担当者の主観などによって評価がぶれやすいというデメリットを生む。欧米では、求職者に対して必要な要件が書かれた「ジョブディスクリプション」と呼ばれる文章を具体的に提示し、また求職者にも自らの経歴や従事してきた具体的な仕事、習得しているスキルなどを明記したレジュメの提出を求めるのが一般的だ。

 採用基準が曖昧であると様々な弊害をもたらす。まず、内定を出してもその人材をどの部署に配属させるのかをすぐに決めにくい。とりわけ新卒採用の場合、内定時点ではその学生が企画系なのか営業系なのか。営業ならば個人営業なのか法人営業なのかなど、入社してからでないと決められないことが多い。

 学生の二極化を助長してしまうという弊害もある。基準が曖昧なため、要領の良い学生ならば「こうすれば企業は喜ぶんでしょ」というポイントを見つけて多数の内定を得る。一方、潜在的な能力は高くとも、自分の良さを十分にアピールできずに苦労する学生も少なくない。

 その結果もたらされるのが、人材のミスマッチだ。内定をたくさんもらえる学生ほど、志望理由が希薄である場合が少なくない。そのため内定を得てから、「この会社に入って自分は何がしたかったのか」「本当にこの会社に行きたいのか」と悩み、内定を辞退する。あるいは入社しても「自分がやりたかった仕事と違う」とすぐに辞めてしまう。これは学生にとっても、企業にとってもいいことは何もない。