大阪府・大阪市は人工島の夢洲(ゆめしま)で2025年万国博覧会の開催を計画している。未来を描く「社会実験の場」として活用すれば、潜在的な経済効果は高い。

(日経ビジネス2018年6月4日号より転載)

石川 智久[いしかわ・ともひさ]
日本総合研究所
関西経済研究センター長

1997年東京大学経済学部卒、住友銀行(現三井住友銀行)入行。2004年経営企画部金融調査室に配属され、11年から大阪勤務。17年から現職。

 大阪府・大阪市は大阪都心からほど近い人工島の夢洲(ゆめしま)で2025年国際博覧会(万博)の開催を計画している。開催地は18年11月、博覧会国際事務局(BIE)総会での投票で決まる。ロシアのエカテリンブルク、アゼルバイジャンのバクーも有力な候補地だが、大阪で開催する意義は大きい。

 大阪府・市の計画によると、開催期間は25年5月3日から11月3日までで、テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。期間中の入場者は2800万人から3000万人を想定している。政府の試算によると、万博の開催により、来場者の宿泊や飲食、会場建設費などで直接的に1兆9000億円の経済効果があるとされる。万博関連分野での企業の投資拡大や外国人観光客の地方周遊の一層の増加が期待される中、この数値は上振れする可能性が大いにある。

 私はこの入場者数予想は十分実現可能な数字とみている。関西圏には2000万人近い人が居住している。大阪を訪れる外国人は17年に1000万人を超えた。夢洲は関西国際空港から近いなど利便性もよく、日本の各地からも来場しやすい。

直接的に1兆9000億円の経済効果
●2025年開催を目指す大阪万博の概要
開催時期 2025年5月3日~ 11月3日(全185日)
開催場所 夢洲(大阪府)
テーマ いのち輝く未来社会のデザイン
想定入場者数 2800万~ 3000万人
会場建設費 1250億円(国・自治体・民間で各3分の1負担)
事業運営費 800億~ 830億円
関連事業費 約730億円
経済効果 1兆9000億円(国による試算)
出所:2025年国際博覧会検討会報告書などから日本総研作成
開催場所の夢洲は関空 や大阪都心から近い(写真=時事)

 いいものをつくることは前提条件だが、3000万人をゆうに超えることも考えられる。

 今回は直接の経済効果とは少し異なる論点から、万博の意義を提示したい。「ベンチャーの登竜門」という視点だ。なにかと比較されることの多い1970年の大阪万博を例にとってみよう。この万博では、35歳だった黒川紀章氏、33歳だった横尾忠則氏、30歳だったコシノジュンコ氏ら若手の建築家や芸術家、デザイナーが多く登用され、そこでの経験が彼らの礎となった。

事業モデル提案の場に

 2020年のドバイ万博は経済面のレガシー(遺産)としてスタートアップ企業と大企業の融合などを掲げ、すでに起業家らによる会合を開いている。
「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマからすると、関与できる企業や人の幅は広い。日本は高齢化の先進国ではあるが、「いのち」というのは必ずしも高齢者に限るものではない。これからの社会をつくっていく若い人材が将来に希望を持って光り輝くことも、この万博での大きなテーマだ。

 例えば、空飛ぶモビリティーの分野。広大な会場の移動手段として、取り入れることができるだろう。新エネルギーや分散型社会というのも候補の一つだ。万博では、本会場と連携する「サテライト会場」が認められている。サテライトは地方にも設置でき、若手・ベンチャーが技術や事業モデルを提案する場があちこちに広がる。

 参加できるのは日本のベンチャーだけには限らない。アジアなどから幅広く受け入れ、様々な視点から、未来社会のあり方を模索する機会とすればいい。新たな技術を日本の万博で試そう、といったムードをつくれないものか。日本人と一緒に仕事がしたいと思う人が増えることも、日本経済にプラスとなる。