データ活用で精度高い融資

 全国銀行協会の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)は「データを制するものがビジネスを制するようになる。(これからの銀行は)金融仲介だけでなく、情報仲介の重要さが極めて大きなポイントになる」と指摘している。

 三井住友フィナンシャルグループの國部毅社長も「これからの銀行業は情報業になる。膨大な顧客データをどう生かしてビジネスにつなげていくか、一生懸命考えている」と語っている。こうした言葉の通り、銀行がこれまで以上に顧客の姿をよく知り、その情報を活用することができれば、一歩出遅れた現在の状況を挽回し、むしろ一気にフロントランナーへと復権するのも不可能ではない。

 それでは銀行は、どのように情報を活用すればいいのか。

 まず求められるのが、従来のように決算期ごとの財務データに依存するのでなく、日々の取引や決済状況をもとに融資する「トランザクションレンディング」の本格的な導入だ。

 商品を仕入れて代金を支払ったり、あるいは販売して入金があったりと、企業が事業上の活動をするたびに口座には必ず細かな決済情報が蓄積される。こうしたデータをつぶさに分析すれば、将来的に売り上げが減少する可能性や、貸し倒れのリスクなどを精緻に予測できるようになる。

 すでに米アマゾン・ドット・コムが同社のネット通販サイト に出店する事業者向けに同様の金融サービスを提供し、これを「アマゾン銀行」として銀行業界にとっての脅威とする見方もある。だが海外の報道などによると、アマゾンによる累計融資残高は17年半ばに3000億円を超えた規模。日本でいえば中堅信用金庫と同程度にすぎない。

 銀行なら、ネット通販サイトに出店していなくてもすでに取引のある顧客企業の様々な決済データを捕捉できる。銀行が取引情報に基づいた融資を事業として成立させられれば、その可能性は「アマゾン銀行」の比ではないだろう。

 顧客企業と顧客企業をつなぐビジネスマッチングにも大きなポテンシャルがある。単独では身動きできなくても、技術や人材などの経営資源を他社との提携で補うことで成長が見込める中小企業は日本に数多いからだ。

 なかでも地銀が日々の取引を通じて保有している顧客データは貴重だ。自行の顧客企業だけでなく、たとえば隣接する都道府県で営業する銀行の顧客企業との提携を提案することができれば、情報の入手手段に限りがある中小企業からは歓迎されるはずだ。

 こうしたビジネスマッチングは、たとえ各案件の手数料は小さくても、積み重ねていけば有望な収益源になる。すでにNTTデータや野村総合研究所といったシステム会社がデータベースの構築に動いている。銀行は関与の度合いを深め、主導権を握るべきだ。

今度こそ「縦割り」脱却を

 実はこうした情報活用の重要性は、20年ほど前から叫ばれ続けてきたことだ。そのたびにCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)やEBM(イベント・ベースト・マーケティング)など、データを活用したマーケティングを目指す動きがあった。だが、いずれも流行語(バズワード)にすぎなかった感が否めない。

 従来は顧客情報が金融商品それぞれの部署ごとに扱われ、それを同じフォーマットで、社内横断で取りまとめする意識も希薄だった。だが前述したように銀行を取り巻く環境はかつてないほど厳しい。縦割りの社内組織を改めるうえで、いまほど適したタイミングはない。情報活用を、再び単なるかけ声で終わらせる余裕はないはずだ。

 銀行が無視できないほどにフィンテック企業が台頭しているのは事実。だが資金を必要とする企業にすぐに融資できるだけの現金を、個人や企業からの「預金」として調達できることは、一般企業にはない、銀行の大きな強みである。減点主義が根強いと言われる銀行業界だが、失敗を許容しながら、小さくてもいいから成功案件を積み重ねていくことが大切になる。

(構成=藤村 広平)