マイナス金利政策の長期化と、「フィンテック」を標榜する新興企業の台頭にあえぐ銀行業界。だが顧客の姿を深く知り、その情報を活用できれば、復権の可能性はまだ十分に残っている。

(日経ビジネス2018年5月21日号より転載)

野崎 浩成[のざき・ひろなり]
東洋大学
国際学部教授

米エール大学大学院修了。シティグループ証券、京都文教大学などを経て2018年4月から現職。近著に『成長神話という煩悩からいかにして金融は解脱すべきか』。

 銀行業界の苦境が叫ばれて久しい。最大の要因は長引くマイナス金利政策により、預け入れと貸し出しの金利差(利ざや)で稼ぐという伝統的なビジネスモデルが揺らいでいることだ。

 全国銀行協会によると、全国の銀行の預貸の利回りの差は2016年度に平均0.23ポイント。過去10年は一貫して前年以下となっており、金融危機にあえいだ1998年度や2008年度をも大きく割り込む水準が続いている。今後もしばらく金利の上昇は見込みにくい。

本業による稼ぐ力は弱まっている
●全国の銀行の業績推移
注:08年度はリーマンショックによる証券化商品関係の損失が急減要因に
出所:全国銀行協会の統計を基に筆者作成
(写真=ロイター/アフロ)

 そこでどの銀行も、金利の影響を受けにくい新たな収益の柱を築こうともがいている。その一例が、金融にまつわる様々なサービスの提供を通じて得られる手数料収入だ。ただし、この領域はIT(情報技術)と金融を融合させたフィンテックを掲げるベンチャー企業との競争が激化しているレッドオーシャンでもある。

 例えば個人向けの資産運用では、かつては生身の銀行員がコンサルティングしていた相談業務をAI(人工知能)などに代行させるロボアドバイザーの進化が著しい。決済インフラについても、銀行を介在する決済から、モバイル決済への流れが止まらない。

 これには、グーグルなど米国のITの巨人たちばかりでなく、中国・アリババ集団の傘下企業が提供する「アリペイ」も存在感を増し、日本でもコンビニエンスストアなど加盟店を増やしている。QRコード決済をめぐってメガバンクが連携するといった動きもあるが、それでも銀行の出遅れ感は否めない。

様々な分野で「お株」を奪われ始めている
●銀行の主要業務と、主な競合企業・サービス

 そんななか、銀行業界にとって数少ない光明の一つとして注目されるキーワードが「情報武装」だ。