結論から言えば、現在の早期離職の根底には、若年層の「職業観」の変化がある。日本生産性本部の「働くことの意識」調査で新入社員の就労意識を時系列で考察することができる。面白いのは、「会社を選ぶ際に何を重視するか」を調査した結果、01年以降、「仕事の面白さ」が「会社の将来性」を逆転している点だ。

「会社の将来性」の重要度が落ちている
●新入社員が会社を選ぶ理由
注:日本生産性本部のデータを基に作成

 就職したら雇ってくれた会社で定年まで勤め上げる──。終身雇用が前提だった時代には、そのような考え方が当たり前だった。しかし激しい消費トレンドの移り変わりなどを受け、今や会社の寿命は30年、それ以上に短いといわれている。一方で平均寿命は延び、人が働ける期間は50年、60年と長くなっている。会社のために働けば生活が保証された時代から、働いていたらいつの間にか会社がなくなることもあり得る時代になった。

 このような流れの中で、若年層の就職に対する考え方は、「就社」から文字通り「就職」に変化している。つまり、一つの会社を選ぶのではなく、職業そのものを選ぶイメージだ。若者にとってもはや会社は定年まで居続ける第二の「我が家」ではなく、「止まり木」的な存在になりつつある。

 ただ、早期離職している若手社員が必ずしも転職で成功しているわけではない。若年早期離職者の転職先に関するある研究では、早期離職者の多くが、特定の産業やより小規模の企業に転職していることが分かったという。

 企業の採用担当者は早期離職に対してマイナスのイメージを少なからず持っていることが多い。また、3年未満の離職は、社会人としての経験や専門知識などの蓄積がどうしても浅くなってしまうため、採用担当から高評価を得るハードルも上がる。早期離職者の転職は同業種や不人気業種、もしくは小規模方向への一方通行になりがちだ。

早期離職を前提とした対策を

 新卒入社の若手はもちろん自社で働いた経験しかない。転職先の情報を公表されているベースで調べることはできるが、実際の職場環境を理解するには限界がある。働いてみたら前職のほうが自分に合っていた、ということは大いに起こり得る。若いころは転職を繰り返すことで「天職」を見つける期間ともいえる。ただ今の日本では、早期に転職を繰り返せば職場の条件はより悪く、さらに次の選択肢も狭まってしまう傾向にある。

 企業、個人両方にとって良いことがなさそうな早期離職だが、防ぐことはできるのか。ここまで述べてきたように、現代の早期離職の要因は若年層の職業観の変化によるものだ。景気が上向いたからといって減るとは限らない。万能な策はないが、企業は、早期離職はある程度発生するものと捉えたうえで対策をとるべきではないか。

 働き方改革の中で社会人の学び直しが注目されるようになった。海外の企業や大学では、社会人が自身のキャリアや働き方を見直すため数カ月~1年ほどの休みをとる「サバティカル休暇」を導入する例がある。日本では最近になって国が旗振り役となって導入を呼びかける動きもある。

 サバティカル休暇は一般的に一定の勤続年数を超えた者が使える仕組みだ。これを若手社員にも使えるようにしてみるのも面白いかもしれない。その期間ほかの職場で働いてみたり、学び直しをしたりすることで、改めて元の会社の魅力に気付くこともあるだろう。企業によっては大きなコスト増だが、休暇中の給与は低めにするなど工夫のしようはありそうだ。

 最近では、副業を認めていない企業でも、出向のような形で他社の職場で経験を積むことができるような仲介サービスが登場している。無理やり人材を囲い込もうとせず、時には学び直しの機会提供や社外を見てもらうことが重要だ。

(構成=浅松 和海)