戦後2番目の長期景気回復の中で値上げが相次ぐが、デフレ脱却には進まない。必要なのは実質賃金引き上げ。AI(人工知能)など新技術の徹底的な活用が鍵だ。

(日経ビジネス2018年4月30日号より転載)

長内 智[おさない・さとし]
大和総研
シニアエコノミスト

2006年、大和総研入社。新興国経済などを担当した後、12~14年に内閣府出向。経済財政白書、月例経済報告などを担当。14年から大和総研で日本経済担当。

 世間では値上げが相次いでいる。今年に入ってからだけでも1月に家庭用小麦粉、2月に大手航空会社の燃油サーチャージ、3月に大手ビールメーカーの一部業務用ビール製品で上がり、4月には大手納豆メーカーが27年ぶりに値上げ、一部ワインやたばこなどの価格もそれぞれ引き上げられた。2012年末の安倍晋三政権発足以後、戦後2番目の長期景気回復が続いた上、ここ数年原油など資源価格が再び上昇し、昨年後半からは世界同時好況に入ったことなどが背景にあるのだろう。

 これに伴って2月の総合消費者物価は前年同月比1.8%上がった。ここでいう総合消費者物価とは、持ち家の場合も借家と同様に家賃を払っているとする「帰属家賃」分を除いたものだ。個人(家計)の感じる物価により近く、これが今上昇に向かっているというわけだ(下グラフ参照)。

物価はエネルギー価格などを 含めると上がってきたが……
●総合消費者物価と日銀の重視する物価の推移(前年同月比)
出所:大和総研の資料を基に本誌作成
注:総合消費者物価には、帰属家賃(持ち家の場合も借家と同様に払っているとみなす家賃分)が含まれない。「新コアコアCPI」は生鮮食品とエネルギーを除く総合物価指数で日銀が重視する指標
物価上昇で、消費者の財布のひもは一層、強く締まることになるのか……(写真=つむぎ/PIXTA(ピクスタ))

 だが、政府はなおデフレ脱却宣言に踏み切らず、日銀も2%の物価上昇を狙って、13年4月にスタートさせた異次元の金融緩和を継続している。日銀が重視する新コアコアCPIと呼ばれる物価指数は、総合指数から生鮮食品とエネルギー価格分を除いたもの。短期的変動の大きい生鮮食品やエネルギーなどによる物価上昇は持続的ではないとして、より安定的な物価の動きを見るためだ。