こうした教育データの記録・分析をしていく上で改善が始まっているのが、学力調査だ。従来の調査方法では問題が異なれば点数が変わり、受験者の平均学力によって偏差値も変わってしまうため、学力を数値化する手段としては課題があった。

 そこで、埼玉県は15年度から、公立小・中学校(さいたま市を除く)の小学校4年〜中学校3年の生徒約30万人に実施している「埼玉県学力・学習状況調査」においてIRT(項目反応理論)という手法を導入した。IRTは経済協力開発機構(OECD)が00年から実施しているPISA(学習到達度調査)や英語の国際的なテストであるTOEFLも採用していて、受験者の集団や試験内容に左右されずに学力を測定できる。

学力データの集め方が鍵に
●埼玉県が実施している学力・学習状況調査の特徴

出所:埼玉県教育委員会資料

従来の調査埼玉県学力・学習状況調査PISA/TIMSS
学力測定手法 CTT(古典的テスト理論) IRT(項目反応理論) IRT(項目反応理論)
調査対象の選定 全体または抽出 全体 抽出
対象学年 小5や中2だけ実施するなど
特定の学年のみで実施
小学校4年~中学校3年 PISA : 15歳
TIMSS : 小4、中2
対象者人数 約30万人 PISA : 6600人
TIMSS : 9100人
データの性質 クロスセクション パネル クロスセクション
結果の公開状況 非公開 研究者に公開 公開
クロスセクションデータ : 同じ時点に集団から収集したデータ
パネルデータ : 同一集団の時系列変化を収集したデータ。変化の原因が分析しやすい
TIMSS : 国際数学・理科教育動向調査

 埼玉県の調査では学力だけでなく、非認知能力(自制心、勤勉性など)についても質問をして記録し、学力との関係などを分析している。この調査は毎年実施しているため、学習結果を時系列で分析できるパネルデータとして使えるという特徴もある。同じ集団の経年変化を継続的に把握することで、どのような施策や指導によって学力や非認知能力が伸びるのかという因果関係を推定でき、データに基づいた指導方法の開発が期待されている。

 同調査はほかの自治体からも関心を集めていて、18年度から福島県西会津町や広島県福山市などで採用が決まっている。