:あっ、食用油の缶がありますが、まさかあれで揚げているんですか?

:揚げてはいません、浸けているのですが(笑)、使っている油はまさに食用のものです。

:ちょっとアレですが、鉛筆って舐めたりしますし。

Y:えっ、そうですか?

:そういうこともあって、口に入れても問題が無いものを、ということもありますが、基本は、書き味をよくするためにいろいろ試した結果、この油がいい、という。

 この後、検査をしてできあがりです。この芯は山形工場に運ばれて、木の軸と組み合わされて鉛筆になるわけです。

:いかがでしたか?

:面白かった。鉛筆の芯は、焼き物で食べ物なんですね。

:ええ、本当にそんな感じですよ。

鉛筆は、実はワインにも似ている

Y:しかし、意外だったのが、これだけの生産規模がありながら「工場」というより「工房」というか、機械化でがんがん量産、という雰囲気をあまり感じませんね。

:いやいや、それもあるかもしれませんが、ひとつは、鉛筆の芯の素材が天然のもので、全面的にオートメーション化すれば品質と効率が向上するかというと、そうも言えないんです。

Y:天然もの。そうか。粘土や黒鉛は、化学的にいつもかっちり決まった成分のものが手に入るわけじゃないのですね。

:そうです。どちらも、産地などによって、品質のばらつきがとても大きい。それが理由でラインを停めることも決して少なくはないんです。どういう配合やすりつぶし方で芯の書き味や濃さを一定に保つのか、人間が関わる部分が相当あるわけです。

:素材が天然ものでばらつきがある、味わいは人間が関与して一定に保つ。ワインみたいですね。

:まさに。素材のばらつきは、時々「テロワール(その土地の環境が産物に与える影響)」と表現したくなります。ワインならばそれによるばらつきも評価の対象になりますが、鉛筆は工業製品だからそうもいきません。

:だから、品質管理も人の目が入るのでしょうね。

Y:では、いよいよ群馬工場の“ソムリエ”をご紹介いただきましょうか。