2001年に始めた、当時最先端の「IoT」サービス

2001年には、無線通信機能を搭載した電気ポットを開発し、現在も「みまもりほっとライン」というサービスの提供を続けています。携帯電話の普及率が6割ほどだったころ、IoTの先駆けともいえる製品を開発したことになります。

市川:実は、日常生活発想という言葉に僕がたどり着いたのは、「みまもりほっとライン」の開発なんです。消費者の暮らしを豊かにするという目的があって、そのために、その時代の最新の技術を使ってそれを実現していくのです。IoTなんていう言葉がない時に、みまもりほっとラインを開発できたという発想を大事にしたい。

 みまもりほっとラインは1996年から開発を始めたのですが、一般発売までに5年もかかっています。インターネットが普及していない当時は、電気ポットとパソコンを電話回線でつないでデータを送信していました。パソコンは何十万円もするし、設置するために回線の工事もしなくてはいけないし、全く商品にならなかった。ですが、それからインターネットと携帯電話が急速に普及しました。そこでNTTドコモと富士通に協力してもらって、三者共同開発に至ったのです。

 最先端の技術を取り入れるという意味では、当社は1918年、文字通り“魔法のような”技術である魔法瓶を製造する会社として創業。そして約50年前に、電子ジャーで家電領域に参入しました。「電気ジャー」ではなくて「電子ジャー」なのは、単に電熱線を入れたわけではなく、村田製作所製の電子部品「ポジスター」をセットすることで、微妙な温度制御が可能になったからです。新しいものを取り込んでいくDNAは持っていますし、それを大事にしていきたいと思いますね。

開発の方法を大きく変えたわけではないのですね。

市川:当社の得意とする分野、もしくは消費者の方々が当社に期待しているところから外れてしまうと、良い製品でもさっぱり売れません。特に生活家電は試行錯誤の繰り返しで、撤退したものもたくさんあります。そんな中で一番長く成功して続いているものが加湿器です。

 総合電機メーカーの加湿器と、当社の加湿器は方式が全然違います。当社製品は、はっきり言って「お湯の出ない電気ポット」なんです(笑)。部品も電気ポットと一緒で、水を蒸発させるだけ。でも、昔はやかんをストーブにかけて蒸気を出していたわけですから、やかんが電気ポットに変わっただけで、非常に分かりやすいし手入れもしやすい。それが「象印らしさ」というブランドイメージにもつながってきているんですよね。だから、あんまりハイテク過ぎる製品を出したら、かえって「大丈夫か」って心配されるんじゃないかな。