市川:私は社員に「われわれは電機メーカーじゃないぞ」と何度も繰り返し言っています。「家庭用品メーカーだぞ」と。当社の企業理念は「暮らしを創る」。電化製品を作るのが最優先ではなく、あくまで「暮らしを豊かにする物は何か」という視点に立ってモノ作りをしているんですね。今の世の中、電気を使わなくて同じ目的が果たせるのならば、そちらの方が省エネでいいですしね(笑)。

高齢化の進展で布団乾燥機のニーズが拡大

布団乾燥機の場合、どのようなところが日常生活発想だったのですか。

市川:もともと、晴れた日に庭先の物干し竿に布団をかけて乾かすというのは、日本人にとって当たり前の日常生活の1つだったわけですよね。ところが、マンションに住む人が増え、高齢化で重い布団の出し入れが難しくなった。そういう環境変化の中で、布団乾燥機のニーズが高まっていったわけです。

 しかしながら、布団乾燥機は、消費者アンケートで「欲しい家電製品」の上位にランクインする一方で、「たんすの肥やしになる家電製品」の常連でもあるんですね。その理由を考えてみると、一般的な布団乾燥機はホースを付けたりマットを敷いたりと、セッティングに手間が掛かることが分かった。

 ならばマットとホースを取ってしまって、簡単にセッティングできる布団乾燥機を作ればいいんじゃないかと考えたのです。それが消費者のニーズにぴったり合致したからこそ、受け入れられたのではないかと思います。

とはいえ、単純にマットとホースを取り払うと機能しませんよね。

市川:布団乾燥機の原理は、温風を布団の中に送り込んで温め、乾燥させるというもの。いわば「大きなドライヤー」です。そのまま布団の中に突っ込んだら、加熱し過ぎて危ないですよね。だから一般的な布団乾燥機は、マットやホースで布団との間に少し空間を作って温風を送っているのです。

 マットやホースなしのスマートドライが安全性を保ちつつ手軽に使えるカギは、ヒーターにあります。通常の電熱線ヒーターは、風が止まるとどんどん温度が上がってしまうけれど、スマートドライで採用したPTCヒーターは、ファンが止まっても一定の温度にコントロールするので、発火の危険性がありません。

 我々が電機メーカーではないので、PTCヒーターは自作していません。当社の製品に必要な技術を見出して、それを製品に組み込んでいくというのが、我々のモノ作りのやり方です。