美的と東芝は20年以上のパートナー

東芝の白物家電事業とは以前からビジネス上のつながりがあったのでしょうか。

:美的と東芝は知らない間柄ではありません。エアコン向けのコンプレッサー(圧縮機)事業での合弁事業を皮切りに、90年代から協業をしてきましたから。つまり20年以上、パートナー関係でありました。

 こうした協業を通じ、美的としては東芝の白物家電事業に関心を持ってきました。今回の事業譲渡は、さらなるパートナーシップの強化だと捉えています。

買収にあたって「東芝ブランド」は魅力的だったのでしょうか。

:美的はブランドビジネスを伸ばすグローバル戦略を進めています。そういう意味で、東芝が白物家電事業を売り出すというタイミングが本当に良かった。世界に出ていくには、東芝のブランド力が必要だったわけです。

 東芝はやはりBtoB(企業向けビジネス)の会社。経営資源を半導体や重電などBtoBに投じることはできても、家電などBtoC(消費者向けビジネス)には投資が回らない。これに対し美的は専業ですので、家電に投資を集中できます。

 東芝が日本やアジア市場で事業を展開しているのも魅力的でしたね。これらの市場でブランドビジネスを展開できるようになりますから。事業を支える優秀な従業員も、大きな資産だと見ていました。

林副社長が東芝ライフスタイルに転じる際、美的のトップである方洪波会長から具体的な指示はあったのでしょうか。

:明確な指示はありませんよ。ただ言われたのは「赤字が数年続いているのは何らかの問題がある。企業の使命はもうけを出すこと。大きく変えてほしい」ということだけです。

 こうした話は私だけでなく、東芝ライフスタイルの経営陣に言い続けていましたね。私自身は美的から来ましたが、まずは東芝ライフスタイルが再び成長できるように、状況をいかに立て直すかを考えています。

東芝ライフスタイルに転じて最初に取り組んだことは何でしょうか。

:組織体制を刷新し、経営の意思決定を早めることから始めました。美的では商品ごとの事業部制になっており、すべての権限や責任は事業部長にあります。東芝ライフスタイルにもビジネスユニットはありましたが、正直はっきりしていなかった。

 以前の東芝ライフスタイルでは、白物家電について「大物」(冷蔵庫や洗濯機など)と「小物」(炊飯器など)の2つの事業部門があるだけでした。それが今では主要製品ごとに事業部を置き、権限と責任を明確化しています。個別の事業は美的に比べると小さいのですが、体制は美的に近いですね。美的の方が権限委譲が徹底されていますが、「ミニ美的」のようなイメージです。