モンクレールを扱う日本の合弁会社の資本構成は、本国が51%で八木通商が49%。先方が更新時期に契約を見直したいと言い出す可能性は、常にあります。

八木:そうです。僕は常にそれを覚悟して経営しています。合弁契約は5年で見直しがあるんですが、「最初の5年だけかな」と思っていたら、今に至るまで契約が続いています。モンクレールのレモ・ルッフィーニ会長とは、合弁会社設立前にある契約を巡って揉めましてね(笑)。非常に厳しい交渉を8カ月間にわたって続けたことがあります。

 でも、だからこそ苦労を共にしたという経験があり、強いつながりになっています。今やモンクレールは大きく成長し、一流企業としてあらゆる機能を持っています。人材もシステムもそうです。八木通商の機能をそんなに必要としているとは思いませんが、我々の意見を聞きたいと思ってくれているのかもしれません。幸いなことに、この合弁関係はしばらく続くと思います。

 モンクレールはドイツや米国などは自前で事業展開しているんですが、不思議なことに合弁を通じてやっている日本が、一番利益率が高いんです。モンクレールの国内売上高は年間200億円程度です。今年は1~9月の時点で前年比17%アップしており、ダウンなどの重衣料が本格的に売れる時期より前から、好調に推移できています。

 事業を拡大しようとする海外ブランドが、どこかの時点で現地のパートナーと別れるのはある意味で当たり前のことでしょう。うちが逆の立場でもそう考えます。だから、我々が保有しているブランドを早く育て上げたい。これは常に頭に入れていています。ただ、モンクレール程の大型ブランドを一つのブランドで代替するのは無理でしょう。日本に進出しているブランドで、日本側のパートナーに満足していないケースが沢山あるので、ここから新たな投資先を選んでいきたいですね。

マッキントッシュは「まだ途上」

モンクレールに次ぐ柱として、子会社化した「英マッキントッシュ」を据えています。ただ、三陽商会の手掛ける同ブランドのライセンス事業は苦戦していますね。

八木:ビジネス上の関係があるのであまり具体的なお話しはできませんが、一つだけ言えることは、マッキントッシュに関して我々の展開するラグジュアリー事業も、三陽商会のライセンス事業も、まだまだ途上だということです。

 例えばの話として、ブランドの本社が弱っていた時に、買うなり資本参加するなりしたらよかったという意見もありますが、現地で経営するのがどれだけ大変か。資本が必要な会社ということは、明らかに事業が弱っているので、資金も人もつぎ込まなければいけません。そういう難しさがあるんです。

モンクレール銀座店

日本のアパレル企業はここ数年のリストラを経て、足元で利益率が改善しています。ただ、本質的なビジネスモデルの変化に対応できている大手企業は少なく、苦境はこれからも続くように見えるのですが。

八木:ラグジュアリーブランドとファストファッション以外、つまり消費者に対するメッセージがはっきりしていないブランドの市場は、競争の激しい“レッドオーシャン”の傾向が強くなっていくでしょうね。大量生産でどの百貨店の売り場にもある同じような商品に、消費者はますます興味を示さなくなるでしょう。

 日本市場でこれから起こるのは、さらなる淘汰だと思います。需要以上に供給側が多い。どんなビジネスにも適正なサイズがあります。