トルコとの同盟関係を捨てるか否か

米国とトルコの関係も、7月のクーデターやその黒幕としてエルドアン大統領が批判しているギュレン氏の引き渡しを巡って微妙になっている。

フォンテーヌ:米国とトルコの関係は変わるだろう。とりわけ、シリアにおける米国とクルド人勢力の関係のために。米政府は現地のクルド人勢力に武器を与えるかどうかを決めようとしているが、もちろんトルコはそんなことを望んでいない。現在、米軍はトルコ南部のインジルリク空軍基地からシリアへの飛行任務に就いている。それだけに問題は複雑だ。クーデターの後は特に。

 次の政権はトルコとの同盟関係を捨て去ろうとは思わないだろう。だが、同盟としてあらゆる意味で難しい状況にある。軍事作戦を含め、トルコとどのようにして同盟関係を維持するのかということを、次の政権はしっかりと計算しなければならない。同時に、シリア北部における地上軍の主力はクルド人勢力だ。トルコもシリアに参戦している中で、クルド人勢力とどのような協力体制を築くのか。そういった複雑なパズルをどのように組み立てるのだろうか。

 その質問に対する1つの回答はないが、仮に次の大統領が「米国はトルコとともにある。クルド人勢力やほかの誰とも取引するつもりはない」、あるいは「米国はトルコがNATOに加盟することをもはや望まない」と発言したとすれば、かなりのサプライズになるだろう。普通に考えれば、次期大統領は同時に両方の勢力とシリア問題に対処しようとすると思う。

シリア・アサド政権への軍事的圧力を高めよ

これだけ複雑化しているシリア内戦を米国は解決できるのだろうか。

フォンテーヌ:問題のひとつは米国の目標設定だ。我々の目標に伴う問題は、テロリストを除き、すべての勢力をまとめ上げるという政治的なプロセスを導入することで内戦をとめようとしていることだ。

 シリアのアサド大統領を排除し、様々な勢力がある種の統一的な政府の設立に同意する。そして、統一政府はISISやヌスラ戦線に銃を向ける。その間、首都ダマスカスに国全体を統治する中央集権的な政府を維持する──。私にはそれが可能なことだとは思えない。4年前であれば実現可能だったかもしれないが、そういった目標は今では不可能だ。

 そう考えるのには、いくつかの理由がある。まず、アサド大統領が勝利を信じているということだ。彼は敗北するとは考えていない。そうだとすれば、アサド大統領が身をひく理由はない。次に、仮にダマスカスからシリアを統治するとすれば、クルドやスンニ派から奪い取らなければならないエリアがある。

 全体的な目標という面で見るべきものは、ある種のラディカルな連邦主義だと思う。シリアという国の内部を様々な部分に分けた高度に分権化された政治モデルだ。外部に対する国境は国としてのシリアだが、国内に異なるグループによって統治されたエリアがあるというイメージだ。こういった連邦主義の実現は最終目標になり得る。

 この目標を達成する手段は大半が外交的で、その多くがロシアとともに行われる。だが、ロシアとイランによって支えられたアサド政権が勝利を信じている限り、いかなる種類の体制であっても、アサド政権側が交渉するインセンティブはないだろう。ゆえに、アサド政権に対する軍事的圧力を高める必要がある。

昨年7月に、オバマ政権はイランと米国など6カ国による核問題に関する最終合意を発表した。ウラン濃縮活動の制限や濃縮設備の削減の見返りに、イランに対する経済制裁を段階的に解除するという内容だ。イランとの核合意はどうなると思うか。

フォンテーヌ:トランプ氏はイランとの核合意を破棄すると述べている。あの核合意がいいかどうかはともかく、イランは既に多くの制裁緩和を受けている。仮に合意を反故にした場合、イランに制裁緩和の果実を与える一方で、核不拡散という義務から解放することになる。それは米国に取っていい取引ではない。一度、制裁を解除してしまうと、EU(欧州連合)を再び制裁に引き戻すことはできないだろう。よって、核合意の破棄は機能しないと思う。

欧州との貿易協定は消え失せる

欧州との関係は? 

フォンテーヌ:EUとの関係は、今回の選挙戦で誰が勝つかによる。クリントン氏が勝てば、欧州に対して(欧州の関係を重要視し続けるという)伝統的なアプローチを取るだろう。明らかなのは、ロシアについて、また東欧に対するロシアの圧力、難民問題、EUとその将来に大きな懸念があるということだ。(米国とEUの包括的貿易協定である)TTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定)は厳しい試練に直面する。仮に、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が米議会を通らなければ、TTIPが実現することはないだろう。

 トランプ氏は、「NATOは時代遅れで、もはやNATOに参加する必要は必ずしもない。欧州の国々はもっとNATOに対する支出を増やすべきだ」と述べている。TTIPにも関心はないだろう。トランプ氏になれば、TTIPは消え失せると思う。