我が家でもエコーは大活躍です。

ブーム:アレクサによって音楽を聴くことがナチュラルになっていると思う。例えば、会社から家まで車を運転している。ラジオからいい感じの曲が流れてきた。アーティスト名は聞きそびれた。そんな時に、「アレクサ、このフレーズの曲をかけてよ」といえば曲がかかる。本当にナチュラルだと思わないか?

 また、次のような頼み方もできる。「何か楽しい曲をかけてよ」「料理のための曲をかけて」「トレーニングに向いた曲を流して」。あるいは、「80年代のU2をかけて」「Bruno Marsでいちばん有名な曲をかけて」など。こういう聴き方はわれわれが事前に想定していたのではなく、顧客の使い方を見ているうちに気づいたんだ。毎日のように目から鱗が落ちているよ。

 もう一つ、顧客を見ていて気づいたのは音楽が家の中に戻ってきているということだ。現在、音楽配信は主にスマホでの利用がメインだ。自室やオフィス、飛行機などあらゆるところで利用されるが、あくまでも個人用デバイスで音楽を聴く時はヘッドホンで一人で聴く。

 だが、エコーはポータブルデバイスではなく、自宅の居間やキッチンに置いてある。つまりパブリックな場所で使われるデバイスだ。これが音楽の聴き方を大きく変える。昔のことを覚えている人もいるかもしれないが、かつて音楽を聴くときは居間のステレオでレコードやCDをかけた。みんなで聞いていたんだよ。その後、音楽は個人で楽しむモノになった。アレクサとエコーの登場で、音楽が再び家の真ん中に戻ってきている。

そういうシフトは音楽産業にポジティブでしょうか?

ブーム:私は音楽産業の未来に極めて楽観的だ。われわれの分析によると、アレクサとエコーによってストリーミングで音楽を聞く層が広がっている。ストリーミングで音楽を聴く層は15~30歳が主流だと思う。だが、最近はキッズとシニアの利用が増えている。

 米国の場合、音楽配信でよく聴かれるジャンルはヒップホップやラップ、ポップミュージックだ。ところが、エコーユーザーの場合はヒップホップやラップだけでなく、ロックやカントリー、クラシック、ジャズ、キッズソング、インディーロックなど様々なジャンルの曲を聴いている。もし15~30歳のユーザー層であれば、もっとヒップホップやラップが中心になるはずだ。

 これは音楽産業の市場が拡大しているということだ。単に音楽配信ビジネスに参入しているだけでなく、市場を拡大させているのだから、誰にとってもいいだろう?

 先日、全米作詞家協会でスピーチした時に、米国でよく聴かれるトップ50がヒップホップとラップばかりという話をした後に、アレクサとエコーの対照的な結果を示した。彼らは立ち上がったよ。そこにわれわれの未来があるって。音楽産業に関わる誰もが興奮していると思う。

アマゾンは売上高1359億ドルの超巨大企業ですが、スタートアップ企業のように素早く新しい製品やサービスを出しています。Amazon Music Unlimitedを立ち上げた経験から見て、アマゾンがスピード感を失わずにイノベーションを進めている理由はどこにあると思いますか?

ブーム:自身の経験を通して言えることとして、一つは"Working Backwards Process"と呼ばれる仕組みがあると思う。これは製品やサービスを提案する際にプレスリリースを先に書くという仕組みのことだ。通常、プレスリリースはサービスが全てできあがった後に対外的に発表するために書くものだが、アマゾンでは企画の段階で1枚のプレスリリースにまとめる。

 当然、サービスができあがる前のリリースなので、ジェフ(・ベゾスCEO)を含め、幹部から無数の質問が浴びせられる。その中には厳しいものもある。そういう疑問に答えるためには、企画段階でそのサービスの意義や理由をクリアにしておかなければならない。このプロセスがあるからこそ、何を実現したいのかという方向が明確になる。

 アマゾンのカルチャーのユニークなのは、文書によるコミュニケーションで多くのことを成し遂げているということだ。文字を書くことで中身がロジカルになり簡潔になる。6年前にアマゾンに入ったばかりの時は戸惑ったが、慣れてくるとコミュニケーションや意思決定に驚くほど効果的なツールだということが分かった。

 もちろん、自分のアイデアを1枚の文章に、しかも未来のプレスリリースに表現するのは難しい。だが、そのプロセスを経ることで自分の考えが明確になり、最終的な製品やサービスはよくなる。パワーポイントで箇条書きにしても意見はまとまらない。