ミュージカル映画『オズの魔法使い』において、重要な存在なのに意外と注目されていないのが、犬のトトです。

 トトは、現実の世界において大地主のミス・ガルチさんの農場で猫を追い回し、さらにガルチさんに噛みついたために彼女の怒りをかい、警察に突き出すために連れ去られます。トトはガルチさんからは逃げ出すのですが、このことがきっけとなって、ドロシーとともに「どこにもない場所」を目指すことになるのです。この物語の原因はトトだともいえます。

意外と目立っているトト

 小人の国マンチキンに来てから、トトはドロシーとともに冒険に加わります。ただトトは一見、わらのかかしやブリキの木こり、臆病なライオンほど目立った活動はしないように思えます。でも、実は重要な役割を果たしているのです。トトの活動する場面をいくつか紹介しましょう。

 旅の邪魔をする西の魔女が、羽の生えた猿を使ってドロシーとともにトトもさらい、西の魔女の城へ連れ去る場面があります。ここでトトは城から逃げて、かかし、木こり、ライオンのところに戻り、三人を城に案内します。城の外ではトトがほえて警備兵たちに見つかってしまうのですが、その警備兵たちを三人は倒したうえで、警備兵に化けることで城の中に入ることができます。そして、城の中でドロシーの居場所へと案内したのもトトでした。

 これらの行動を通して考えられるのは、トトはうまくコミュニケーションをとることが出来ない代わりに自分のできることをよく考え、そして賢く先を予測して行動したのではないかということです。私たちは職場においても自分には足りないことがあると思うかもしれません。ただし、経験、技術、才能、人脈など自分には足りないと思う部分があったとしても、「自分には何ができるか?」を常に問いかけ、自分にできる最大限の行動を起こす必要があるということを、トトから学べます。

本当にマイナスの行動?

 オズは魔法使いではなかったのですが、機械仕掛けであるというオズの秘密を、カーテンを噛んでめくって暴くという重要な行動を起こしたのもトトでした。その一方で、気球でカンザスに帰ろうとしたときに、トトが猫を追いかけてしまったために、ドロシーも気球を降りてトトを追い、その間に気球が空にあがってしまうというトラブルも巻き起こします。

 こうして気球では帰れなくなってしまうのですが、そんなドロシーたちの前に北の魔女が現れて、「あなたはいつでも帰る力を持っている。そのことをこの旅で学んだはず」と話しかけます。こうしてドロシーは、心から求めるものは、いつも家のそばに、身近にあると悟ります。そして、「家が一番」という言葉を呪文として唱え、カンザスに帰ることができるのです。

 このように説明すると、トトの行動がきっかけになって、物語が展開していることが分かります。ただ、それはプラスの活動だけとは限りません。ガルチさんの猫を追わなければ、ドロシーたちはマンチキンに迷い込むはありませんでした。またトトが吠えなければ警備兵に見つかることもありませんでしたし、トトが猫を追いかけなければ、気球が飛びたつこともありませんでした。