ミュージカル映画『オズの魔法使い』に仕事と生き方を学ぶ連載の第3回です。

 主人公の少女ドロシーは、虹の向こうに「どこにもない場所」を求めるうち、自分が住んでいたカンザスという現実を離れて、小人の国マンチキンに来ました。そこでドロシーは、元の世界に戻るために、オズの魔法使いがいるエメラルドシティを目指して歩き出します。そして、道中で出会ったわらのかかし、ブリキの木こり、ライオンとともに同じ場所を目指します。

動機が違っても1つの目標を目指す

 しかし、元々といえばそれぞれが本当に求めているものは違いました。脳みそがほしいかかし、心がほしいブリキの木こり、勇気がほしいライオン、そしてカンザスに戻りたいドロシー。3人は、ドロシーの導きによって、それぞれ自分の動機を、同じエメラルドシティを目指すという共通の目標へと結びつけます。

 それまで3人は個々の状況に漠然と悩んでいました。そんな中でドロシーと出会い、ドロシーの強い意志と優しさにひかれ、西の魔女に妨害されるだろうということも覚悟のうえで、意志を高めて、共通の目的に向かいます。これはまさにアカウンタビリティ(主体性)を獲得したといえるでしょう。

 私たちの人生にも同じようなことが起きます。例えば、仕事においてあるプロジェクトをチームを結成して遂行するときには、そのプロジェクトの成功が共通の目的となります。しかし、個々の動機というのは違うかもしれません。チームリーダーはその成功を実績として、他社へ転職することが最大の動機です。スタッフの一人は評価されて、昇級することを望んでいます。一人は同じくプロジェクトに参加する女性と仲良くなりたいという動機があります。

 このように個々の動機が異なっても、1つの目標を目指せます。働いている本当の動機は違いますが、目標を明確にすることにより、それぞれ違う方向に向いていたベクトルを同じ方向に向けられるのです。

 そして目標を明確にすることとともに重要なのは、ドロシーのようにそれぞれの望みを1つにまとめ、皆の持つ力を引き出すリーダーです。実社会で言えば組織のメンバーの望みや特質を理解し、メンバーの力を引き出すリーダーが必須となるのです。逆にいえば、皆の力を引き出せるリーダーさえいれば、プロジェクトの成功は約束されたといえるかもしれません。

それぞれの個性が生かせる組織体制を

 エメラルドシティを目指す4人は、西の魔女からの様々な妨害工作に遭遇します。わらのかかしは火をつけられてしまうのですが、燃えないブリキの木こりに助けられました。また魔法のケシの花で、ドロシーとライオンは眠らされてしまうのですが、生物ではないかかしと木こりは眠らずに助けることができました。

 チームで仕事をするときも、このように個々人の特長を生かすことが重要となります。会社でも役割は分担されているのが一般的でしょう。仮に管理、企画、事務、作業と考えると、それぞれスキルに合わせて仕事が割り振られます。

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