欠点もプラスに働く

 わらでできたかかしは、火に弱く、西の魔女から何度も火の攻撃を受けて燃えそうになります。一方で、ケシの花の麻薬でドロシーたちが眠らされるときは、無生物なので眠らずに、みんなを助けることができます。無生物という欠点を利点とすることができたワケです。

 また、西の魔女の城で一行が追いつめられて、魔女がホウキに火をつけて、かかしが燃やされそうになると、ドロシーはかかしに水をかけます。そして水の一部が西の魔女の目に入り、魔女は溶けて死んでしまいます。魔女はかかしが火に弱いと執拗に攻撃しますが、実は魔女は水に弱かったのです。かかしが火に弱いという欠点があったからこそ、西の魔女を滅ぼすことができたといえます。

 目の見えない人は点字ブロック、耳の聞こえない人は手話を使うように、自分の能力で解決できないことは、手段や方法によって、見える人、聞ける人以上にできるようになることもあります。マイナスと思えたことが、時にはプラスに働くことがあるのです。かかしの場合、「火に弱い」という自分の欠点から、解決策が生まれました。

危機に直面すれば集中できる

 わらでできたかかしは、わらが抜ければ、実体がなくなります。でも、わらを入れれば、再びかかしになります。ブリキの木こりにも共通するのですが、人間の脳・頭や心臓・心のことはよくわかっておらず、実体があるように思っていますが、実は曖昧なものだということを示しています。

 かかしもブリキの木こりと同じように、人間の形をしています。そのことも、人間存在の曖昧さ、時にはそれが虚像であることを示しています。ここで述べられた脳や心の問題、人の形というのは、心がない人、頭を使わない人に対する風刺でもあるのです。

 そして、危機に陥ったときに、かかしは頭を使い、あるいは意図せずに、みんなを救います。窮地に陥るから解決策が出てくることは、私たちの生活でもあるでしょう。エジソンは、「電球を完成するまでに何回失敗したか」という問いに対して「0回」と答え、「1万通りのうまくいかない方法を見つけただけ」というのです。そのとき、おそらくエジソンは自分を窮地に追い込んで集中したから、成功できたのでしょう。

一番勇敢なのはかかしだった

 このように、3人のうちでかかしは一番勇敢かもしれません。燃えやすいのに、「火をおそれない」と頑張り、ぶれずに明確に目標を見すえることで、解決につなげました。

 私たちは日ごろ、「どうせだめだろう」と、やる前からあきらめてはいないでしょうか。あきらめないことこそが大切なのです。エジソンは1万通りでも挑戦するという姿勢があったのです。もしあきらめたら、それは単なる失敗となったでしょう。

 かかしは、燃えやすいという欠点を克服して、さらにそれを生かしました。そして、かかし、ブリキの木こり、ライオンの3人は、ドロシーに会うまであきらめていたそれぞれの欠点を克服し、一丸となったことで、西の魔女を倒すことができたのです。

 だれでも頭をつかえること、欠点もプラスになること、危機に陥るから解決できること、あきらめないこと。『オズの魔法使い』はこのように、かかしの行動を通して、さまざまな点から読む人に勇気を与える物語だといえます。

 さて、これまでドロシー、トト、ライオン、ブリキの木こり、かかしについて考えてきました。次回は、ドロシーのルビーの靴に焦点を当てて考えてみます。