ミュージカル映画『オズの魔法使い』で、主人公ドロシーと共にエメラルドシティへ旅をする3人。かかし、ブリキの木こり、ライオンの中で、かかしの次にドロシーが出会ったのがブリキの木こりです。

 最初にドロシーに出会ったかかしは、体がわらでできており、脳みそを手に入れるためにエメラルドシティを目指します。その途中で彼らはサビて動かないブリキの木こりを見つけます。ドロシーとかかしが油をさすと木こりは動き出しますが、木こりは、「職人が心を入れ忘れた。心があれば感情があるのに」と嘆きます。そして、心を手に入れるために、ドロシーたちとともにオズの魔法使いの元を目指すのです。

ブリキの木こりが心を得る

 ドロシーたちがエメラルドシティに近づくと、西の魔女がケシの花の魔力、つまり麻薬で彼らを眠らせようとします。人間のドロシーと動物のトト、ライオンは眠りますが、わらのかかしとブリキの木こりは眠りません。そこで3人を助けようとするのですが、なかなかうまくいきません。

 すると北の魔女が雪を降らせて彼らを目覚めさせてくれます。ただし、雪が降ったおかげで、ブリキの木こりはサビて動けなくなり、再びドロシーたちに助けられます。つまり、人間にとっては恵みの水でも、ブリキの木こりには害になるのです。

 ブリキの木こりは、心がない、感情がないことを悩みます。でも実際は、旅の間もドロシーたちを心配する感情があるのです。ここで心とされているものは、同時に血液を送る心臓と脈拍です。

 オズの魔法使いに会うと、ブリキの木こりはこう言われます。

「心がほしいのは、ブリキでガチャガチャいうお前の中が空っぽだからだろ」

 これは私たちが時折感じる心の空虚感を象徴しているのかもしれません。

 みんなで西の魔女を倒して、オズの魔法使いを演じていたアルタに会うと、ブリキの木こりはこう言われます。

「心がほしいんだって。ないほうが幸せだ。心なんてあるから辛い想いをするんだ」

さらに、

「君はすばらしい心を持っている。欠けているものは人からの感謝の印だ。君の心の温かさをたたえて、感謝の印に」

と加えて言われて、ブリキの木こりは時計を与えられます。そのカチカチと規則正しい音が心臓の脈拍を示します。さらにこう言われるのです。

「どれだけ愛するかじゃなくて、どれだけ人から愛されるかが大事なのだ」

 このように、心についての一つの真理がこのシーンから読み取ることができるのです。

自己認識力

 ブリキの木こりは、確かに脈を刻む心臓はなかったかもしれませんが、心と感情はあったのです。心の空虚さを感じ、それに気づかなかっただけです。自分に感情があることに気づかないのは、自己認識力の問題です。

 このことも、私たちの問題に重ねて考えることができるでしょう。私たちは自分を正しく認識しているとは限りません。例えば、自分は正義を通していると考えても、他人はそう思っていないことがあります。

 また、多くの人は「自分はいい人間だ」と思っているでしょう。でも、問題に遭遇したときに正しい行動をとれるでしょうか。小さなことでいえば、席を譲る、道を教える、といったように人を助けるといった機会に、正しく振る舞えるでしょうか。