テロメアが短いと動脈硬化が進んでいる

 テロメアの長さは血液中の白血球やリンパ球で調べることができる。先に触れたように、一般に赤ん坊より老人のほうがテロメアは短い。ある程度は年齢に比例するが、個人差が大きく、年齢が同じでもテロメアの長さが同じとは限らないという。

 では、テロメアを見ると、その人があと何年生きるか分かるのだろうか?

 「血管年齢のように、テロメア年齢という表現はできるかもしれません。ただし、細胞の老化はテロメアの長さだけでは決まらない。活性酸素による酸化ストレスなど、他の要因もありますから」と近藤さんは苦笑する。

 つまり、テロメアの長さは「細胞の老化度」を見るひとつの尺度にはなるが、それだけで「あと何年生きられます」などと単純に寿命を判断することはできないわけだ。

 とはいえ、テロメアが短いということは、それだけ細胞が老化しているとはいえるだろう。実際、「テロメアが短い人は動脈硬化が進んでいることが多い、といった報告はいくつもあります」と近藤さん。テロメアが短い人はがんになりやすい(*1)、テロメアが短いと心疾患と脳血管疾患のリスクが高くなる(*2)といったことも確認されている。

 単純に数値化はできないとしても、細胞の老化度を示すテロメアの長さは、その人の寿命とも無関係ではなさそうだ。

その気になればテロメアは“若返る”?

 テロメアはすり減っていく一方ではない。「最近の研究から、運動などの生活習慣によってテロメアが伸びることが分かってきました」と近藤さんは続ける。

 「テロメラーゼというテロメアを伸ばす酵素があります。これがあれば細胞が分裂してもテロメアは欠けない。生活習慣を改善することでテロメラーゼが活性化され、テロメア寿命を延ばすことができるんです」(近藤さん)

 ちなみに精子や卵子を作る生殖細胞やiPS細胞(人工多能性幹細胞)はテロメラーゼが活性化しているため、何回分裂してもテロメアが短くならない“不死の細胞”だ。

 同じ平均年齢51歳の集団で、若い頃から運動習慣のある人たちとない人たちの白血球を調べた研究がある。運動している人たちのほうがテロメラーゼ活性が高く、テロメアも長かった(*3)。

 カリフォルニア大学予防医学研究所のディーン・オーニッシュ所長は、35人の男性のうち10人にライフスタイルの改善を指導した。低脂肪で野菜や果物の多い食事、週5回以上の有酸素運動、ストレス管理など、トータルで「健康的な生活」をしてもらった。5年後に採血してテロメアの長さを測ると、何もしなかった人たちが3%短くなっていたのに対し、指導を受けたグループは逆に10%長くなっていたという(*4)。テロメアの長さだけを見れば“若返った”わけだ!

 つまり、「努力でテロメアを伸ばすことができるんです」と近藤さんは指摘する。

  *1 PLoS One. 2011;6(6):e20466
*2 BMJ. 2014 Jul 8;349:g4227
*3 Circulation. 2009 Dec 15;120(24):2438-47
*4 Lancet Oncol. 2013 Oct;14(11):1112-20