聞きたかったけど、聞けなかった…。知ってるようで、知らなかった…。日常的な生活シーンにある「カラダの反応・仕組み」に関する謎について、真面目にかつ楽しく解説する連載コラム。酒席のうんちくネタに使うもよし、子どもからの素朴な質問に備えるもよし。人生の極上の“からだ知恵録”をお届けしよう。
最近耳にする機会が多い気がする「テロメア」という言葉。これは細胞の染色体の末端にある特殊な構造物で、その長さを見ると人の寿命が分かるといわれているが、本当だろうか?
テロメアの本来の役割は、染色体を保護し、染色体同士がくっついたりするのを防ぐこと。細胞が分裂するたびにテロメアは短くなっていき、ある程度まで短くなると細胞はもう分裂できなくなる。そのため、「老化の回数券」と呼ばれることもある。実際、赤ん坊のテロメアは長く、老人のテロメアは短いという。
ではテロメアというのは、落語の「死神」に出てくる「命のロウソク」みたいなものなのだろうか? 老化のメカニズムに詳しく、日本基礎老化学会理事も務める京都大学医学部附属病院(京都市左京区)地域ネットワーク医療部准教授の近藤祥司さんに聞いた。
テロメアが短くなると細胞は分裂しなくなる
「そもそも染色体とは、ゲノムDNAにヒストンなどのたんぱく質がくっついて小さく折りたたまれたもの。DNAには4種類の塩基に遺伝情報が書き込まれています」と近藤さんは話し始めた。
4種類の塩基とは、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)だ。DNAの上にはこの4種類の塩基があり、その並び方によって、すべての遺伝情報が伝えられる。
哺乳類の場合、DNAの末端部分は「TTAGGG」という6個の塩基のセットがいくつも続く形になっている。この6塩基のリピート部分がテロメアだ。「ここには遺伝情報が入っていない。つまり、なくなっても大丈夫なようにできているんです」と近藤さんは説明する。
細胞が分裂するときDNAがコピーされるが、完全にコピーすることはできず、末端の部分だけ欠けてしまうという。この欠ける部分がテロメアだ。染色体として見ると、細胞分裂する度に末端部分のテロメアが欠けて、短くなっていくことになる。
「テロメアが一定以上に短くなると、染色体同士がくっついたり、染色体がちぎれたりすることで、異常な染色体ができてしまう。そのため、あるレベルまでテロメアが短くなると細胞は分裂しなくなります」(近藤さん)
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