生き残りをかけて地方銀行の再編が続いている。だがそれは解決策になるのか。長期化する低金利政策、伸びない企業向け融資、さらには金融とIT(情報技術)が融合したフィンテックの台頭……。体力がものをいったかつての不良債権への対応とは異なり、銀行にいま訪れているのは「静かな危機」だ。経営環境が厳しさを増す地銀の生き残り方として、独自の動きを見せる静岡銀行の狙いとは。

 地方銀行の再編劇を見るたびに、いつも思うことがある。「リストラ以上の相乗効果」が実現できたケースは何件あるのだろうか、と。

 地銀が再編すると何が起こるのか。救済色の強い吸収合併や統合の場合、救済された側の店舗や人員が大規模なリストラの対象となり、不良資産を処理して残った資産が引き継がれる。

 両行が対等の再編の場合は、これより話がややこしい。まずは重複している店舗のうち、旧A行と旧B行のどちらを残し、閉めた方の人員はどこに再配置するのかが大きな議論になる。

 行内で使用する書類などの細かい仕様をどちらのものに統一するかも焦点になる。現場の職員の業務フローが大きく変わるからだ。究極の問題は、人事・給与体系を含めた待遇面をどうしていくのか。そこには、旧行ベースの権力闘争も否応なしに生じてくる。

1+1=2以上にならない

 統合に向けて生じる、こうした諸々の作業に、銀行は大きく経営資源を割く必要がある。だが、それはあくまで銀行内部でのこと。それによって飛躍的に融資が伸びたり、新しいビジネスモデルを示せたりするわけではない。

 救済にしろ対等にしろ、旧来型の地銀再編は「1+1=2以上にならない」というのが、記者の肌感覚だ。

 そんな中、静岡銀行の柴田久頭取に再編についての考え方を聞いた。端的に言ってしまえば、柴田頭取も「再編論者」だ。だが、その絵姿は旧来型と大きく異なる。コンセプトは「異業種再編」と「機能別再編」の2種類だ。

静岡銀の柴田頭取は、地銀業界では珍しい53歳という若さでトップに就いた。(写真:廣瀬 貴礼)

 まずは「異業種再編」。柴田頭取は地銀再編に対してこんな見方をしている。「銀行同士で再編しても、結局は銀行のままですよね。それによって、お客様に提供するサービスや業務の幅が広がるわけではないんです」。

 そこで進めているのが、異業種企業との資本・業務提携だ。地銀業界といえば自前主義が当たり前の世界だが、「一から始める時間の余裕はありません。最初からスキルやノウハウを持った会社と組む方が合理的です」(柴田頭取)との考え方から、ネット証券会社・マネックスグループを皮切りに、LIXILグループなどと一緒に住生活サービスを手掛ける企業を設立したり、資産運用会社に出資したりしている。

 歴史的な低金利の環境下で、企業向け融資や有価証券運用がこれまでのような収益を生まなくなっている。だからこそ、銀行にない機能やサービスを持った会社と手を組み、新しい収益源に育てようとしている。