仕事が終わると毎日、父親の入院先に顔を出して看病した。交通費などこまごまとした出費も積み重なった。すぐに100万円の限度額に達し、他の銀行からも追加で借りた。ローンの返済で家計が逼迫し、それを乗り切るために、また借りる。まさに自転車操業の日々が続いた。

 「看病疲れで借金のことを冷静に考える余裕がなかった。親が生きている間に出来る限りのことをしてあげたいという気持ちが強く、借り続けてしまった」とみち子さんは話す。「いつでも引き出せます」「使いみちは自由」「銀行だから安心」。銀行から自宅に届いたカードローンの勧誘ハガキを前に高橋さん夫妻は唇をかみしめる。

 「元気で働ける期間はあと10年もない。このままでは何年たっても完済できないと考えて恐ろしくなった」。父親の病状が小康状態になったのを契機に、我が身を振り返った2人は7月、藁をもつかむ思いで生活協同組合連合会グリーンコープ連合(福岡市)の生活再生相談室を訪れた。現在、弁護士と相談しながら債務整理の道筋を探っている。

貸出残高は5年で1.7倍に

 銀行がカードローンに傾倒し始めたのは2006年の貸金業法改正がきっかけだ。消費者金融に対して貸付限度額が「年収の3分の1まで」とする総量規制が課せられた。一方、規制対象から外れた銀行は個人向けカードローン事業を拡大。国内銀行の貸出残高は17年3月時点で5兆6024億円と、5年で約1.7倍に膨張した。

 背景にはマイナス金利に代表される超低金利政策がある。銀行の収益源のだった国債の運用益は落ち込み、企業融資も金利が低く利ざやを稼げない。15%近い金利で貸し出せるカードローンは銀行にとって数少ない収益の柱の一つになった。“甘い蜜”に群がるように、メガバンクも地銀もカードローンに傾倒した。

 カードローンはもともと無担保で使途が自由なことから、借金が膨らみやすいとされる。加えて、銀行はテレビ広告などを通じて、銀行が取り扱うことでの安心感を訴求してきた。「消費者は、社会問題になった消費者金融には嫌悪感があるが、銀行への信頼は厚い。カードローンに対する警戒心が薄れがちだ」。多重債務者の生活再生支援に取り組んできた、グリーンコープ連合の行岡みち子常務理事はこう指摘する。

 さらにグリーンコープ連合の行岡常務理事は「多くの銀行は自行に口座を持つ人にカードローンを貸しているのだから、本来は返済能力もある程度把握しているはず。消費者が困窮する前に何らかの手を打つべきだ」と話す。全国銀行協会(全銀協)は今年3月、カードローンに関する広告宣伝の抑制や審査の厳格化などを申し合わせた。それでも金融庁は9月1日、メガバンクや地方銀行などに実態把握のための立ち入り検査を月内に実施すると発表、批判は高まるばかりだ。

 全銀協は9月14日には、10月から会員行のカードローン融資残高を毎月公表し、消費生活相談員や専門のカウンセラーなどから返済方法の助言など受けられる相談窓口を設けると発表。利用者本人や家族の申告で融資を制限する制度を、2018年度をめどに導入する方針も明らかにした。

 業界の自助努力で批判をかわせるのか。銀行を見る目は厳しくなっている。