日経ビジネス9月18日号の特集「もう銀行はいらない」では、産業育成や企業再生の先導役としての存在感が薄れ、目先の収益確保に走る銀行の現状を示した。長期化する超低金利政策で利ざやが稼げず、企業融資も伸びない中、銀行が力を入れてきたのが個人向けのカードローンだ。

 無担保で使途の制限なく貸し出すカードローンは、多くの銀行を潤す一方、多重債務者の急増を招いているとの批判も浴びている。金融庁も問題視しており、銀行の対策に動き始めた。かつての「サラ金」問題の再来なのか。利用者の声を聞いてみよう。

大量のパンフレットやチラシを配布するなど、銀行はカードローンを積極展開している。本文とは関係ありません(写真:朝日新聞社)

 日経ビジネス9月18日号の特集「もう銀行はいらない」で紹介した福岡市に住む会社員、高橋一郎さん(62、仮名)と妻のよし子さん(61、同)。カードローンの利用を始めたのは今から10年前のことだ。

 当時の一郎さんの手取り収入は月20万円ほど。よし子さんはパート勤めで月7万円から8万円だった。安定して暮らしていける水準だが、よし子さんには介護が必要で持病を持つ両親がいた。2人の介護費用や治療費がかさんで貯金は底をつき、地元の銀行からカードローンを借りた。それをきっかけに債務が膨らんだ。

 返済しながら生活費を捻出するため別の銀行からも借り入れ、背負った借金は地銀3行から全部で300万円。一郎さんの給与とよし子さんのパート収入を合わせた、世帯年収に匹敵する額だ。

ローン返済のために借り入れる

 最初に借りた銀行カードローンは年利14.9%で利用限度額は50万円だった。融資審査ではローンの借り入れに必要な年収証明などの書類を提出せず、自己申告だけで済んだという。ATM(現金自動預け払い機)から現金を引き出しては、両親の介護用品の購入や病院代、通院のための交通費などに費やした。すぐに利用限度額に達した。

 返済に回せるのは毎月1万円。だが実際はその多くが利息分となるため、50万円の元金はほとんど減っていかない。わずかばかり余裕ができると多めに返済することもあったが、生活が苦しくなれば限度額まで再び借り入れた。客観的に見れば利息ばかり払い続け、いつ完済できるか見通しがたたないまま借り続けていたことになる。

 こんな状態に拍車をかけたのは2年前のことだ。銀行から電話がかかってきて、カードの限度額を100万円に引き上げてくれるという。折しも父親の病が悪化し、治療のための出費が一段と増えていた。銀行に勧められるままに限度額を引き上げた。