<span class="fontBold">玉塚 元一</span><br>旭硝子などを経て、2002年ファーストリテイリング代表取締役社長 兼 COOに就任。2005年9月に企業再生・事業の成長を手掛ける企業リヴァンプを創業。ローソン社長、会長CEOを経て2017年6月、デジタル製品のテスト及びQAを行うデジタルハーツホールディングス代表取締役社長CEOに就任。
玉塚 元一
旭硝子などを経て、2002年ファーストリテイリング代表取締役社長 兼 COOに就任。2005年9月に企業再生・事業の成長を手掛ける企業リヴァンプを創業。ローソン社長、会長CEOを経て2017年6月、デジタル製品のテスト及びQAを行うデジタルハーツホールディングス代表取締役社長CEOに就任。

システムは目的を持つ

システムに目的があるとすると、今回の法人化の場合、何ですか。

玉塚:話をやや大きくして一般論を申し上げると、大学にある運動部の法人化は多くの方に考えてほしい大事なテーマだと思っています。わかりやすくするために、あえて生々しい言い方をすると、けっして小さくない額のお金が動き、学生からOBまでけっして少なくない人数が関わっているわりに、組織としてのガバナンスがどうなっているのか、外から見てわかりにくいところがありました。

 蹴球部を例にとると、150人ほどの部員がいて、彼らが部費を払い、現場は学生主体で動いている。一方、黒黄会(こっこうかい)というOB会があり、そこに私を含め、1300人くらいの会員がいて、会費を払っている。部費と会費以外にチケット収入があったり、スポンサーから寄付を募ったりすることもあります。

 もちろんお金の管理はきっちりやっています。ただ、大変なのですよ。蹴球部でしたら、女子学生のマネジャーが沢山の通帳を見ながら入出金を事細かくチェックしています。OB会もOB会でやっている。

 規模の大小はともかく、どの大学でも似たり寄ったりでしょう。また、何か新しいことをしようとしたとき、運動部とOB会が何をどう判断していくのか、この辺りも複雑な場合がある。実際に問題があったとか、なかったとか、そういう話ではなくて、組織として見た場合、もっといい形があるのではないかということです。

今後は新法人の慶應ラグビー倶楽部が部費や会費を徴収して管理するのですか。

玉塚:現場は今まで通りです。蹴球部も黒黄会も長い歴史を持つ組織ですから今後も自主的に活動します。ただし、新法人のスタッフが蹴球部や黒黄会を手伝って、全体のお金の管理を一緒にやっていきます。慶應ラグビー全体として、どのくらいのお金が出入りし、どう使っているか、一元管理をするわけです。

<span class="fontBold">神武 直彦</span><br>宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構・JAXA)でH-ⅡAロケットの研究開発と打ち上げに従事。欧州宇宙機関(ESA)研究員を経て、JAXA主任開発員。2009年度より慶應義塾大学准教授。2018年度より現職。社会技術システムのデザインやマネジメントの教育研究に従事。
神武 直彦
宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構・JAXA)でH-ⅡAロケットの研究開発と打ち上げに従事。欧州宇宙機関(ESA)研究員を経て、JAXA主任開発員。2009年度より慶應義塾大学准教授。2018年度より現職。社会技術システムのデザインやマネジメントの教育研究に従事。

複数世代からアイデアをもらう

大学の運動部やOB会はそもそもどういう位置付けだったのですか。

神武:任意団体です。文字通り、任意でやっている団体です。文武両道という言葉がありますし、慶應義塾大学はそれを目指していて、学生は教室で講義を受けるだけではなく、体を動かす体育の授業も受講します。ただ、体育会の活動は任意です。

玉塚:文武両道の人材育成は重要で、新法人をつくった目的の一つです。ただ、最初からすべての目的を明確に決めていたのかというとそうでもなく、慶應のラグビーは今後どうなっていくとよいのだろうか、というそもそものところから議論を始めました。

 土曜日などに学生やOB・OG、関係者に集まってもらい、あれこれ話し合うと実に色々な声が出てきました。今後を担う若手の意見を聞かないといけない、ということで、20代、30代、40代に意識的に声をかけ、複数の年代からアイデアをもらいました。

 もっとコーチの数を増やしたい。世界のラグビーはどんどん進化しているから外国人のコーチにも来てほしい。ラグビーをやってきた海外の学生を受け入れたい。慶應義塾全体で見ると13のラグビー団体があり、総勢750人も部員がいる。もっと連携してはどうか。合宿所もばらばらだが、クラブハウスを持ったほうがいいのではないか。ITをもっと使ってスポーツデータをとり、試合やトレーニングに活かすべきだ、とか。

 こうしたことに優先順位を付け、新法人が取り組んでいきます。何をするにも先立つものが欠かせません。ですから法人格を持つ組織をつくり、お金の管理を含めたガバナンスを効かせていこう、という話になったわけです。

お二人が最初に話し合ったときにもスポーツデータの話が出たのでしょうか。

玉塚:いや、慶應のラグビーをどうしていったらよいでしょう、という大きな話でしたね。最初に神武さんに助言してもらったとき、ITやスポーツデータの話はほとんど出なかったのでは。

神武:まず申し上げたのは、法人という新システムをつくるのであれば、蹴球部を持続的に発展させていくために、将来どうなっていたいのか、どうして法人が必要なのか、その目的を明確にして、選手、OB、そして慶應義塾各校のステークホルダー(利害関係者)で共有する必要がありますね、ということでした。

 その上でステークホルダーが納得し、一緒に取り組んでくれるようなシナリオを書く。持続性のある運営ができるシナリオ、ラグビーを通じて社会に貢献していけるシナリオ、もちろん現役のチームをもっと強くするシナリオも必須です。

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