逆流性食道炎は食道がんのリスクを上げる

 ここでもしかすると、「でも多少調子が悪くてもなんとかなるし、そこまで気にしていない」という方もいるかもしれません。

 確かに誰しも膝や腰が痛いとか、肩こりがひどいとか、アレルギーがあるとか、多少の体の不調とは折り合いをつけて日々を過ごしています。ただし、逆流性食道炎に関してはそれらと同列に扱わず、もっと真剣に向き合った方がいいのです。

 というのも実は、逆流性食道炎は医療者の間で、非常に問題視されるようになってきています。それはなぜかというと、逆流性食道炎が食道がんのリスクを上げるからです。

 ここで、肩すかしと感じた人もいるかもしれません。もちろん、がんのリスクを上げるものは、ほかにもたくさんあります。今までも解説してきた通り、タバコは肺がん、ピロリ菌は胃がん、アルコールは肝臓がんのリスクを上げます。逆流性食道炎が食道がんのリスクを上げると言っても、ことさらに驚くようなことではないかもしれません。

 ただし、ここで医療者が問題だと感じているのは、「ピロリ菌の除菌が逆流性食道炎を惹起しやすい」ということが明らかになってきたからです。

 ピロリ菌を除菌すれば胃の粘膜が元気になって、胃酸の分泌が今までよりも活発になるので、逆流性食道炎を起こしやすくなる。つまり医療者は、「胃がんのリスクを減らそう」と思って今までピロリ菌を除菌し、その結果、実は「人為的に食道がんのリスクを上げていた」可能性があるのです。

 ほかならぬ私自身も医療者の一人であるため、この問題に踏み込むことには多少の戸惑いを感じずにはいられません。しかし、もちろん避けては通れない非常に重要な問題なので、次回詳しく解説いたします。

【参考文献】

逆流性食道炎ガイドライン

Kusano M, et al. Nationwide epidemiological study on gastroesophageal reflux disease and sleep disorders in the Japanese population. J Gastroenterol. 2008;43:833-41.

天野 祐二、他. 本邦におけるBarrett食道癌の疫学―現況と展望― 日本消化器病学会雑誌 2015;2:219-231

Lagergren J, et al. Symptomatic gastroesophageal reflux as a risk factor for esophageal adenocarcinoma. N Engl J Med. 1999;340:825-31.

Iijima K1, et al. Reflux esophagitis triggered after Helicobacter pylori eradication: a noteworthy demerit of eradication therapy among the Japanese? Front Microbiol. 2015;6:566.