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精密検査受診率を上げるには

近藤:がん検診で要精密検査になっても、精密検査に行かない人も問題ですよね。そういう人に向けては、何か対策を取っていますか。

溝田:リーフレットを今、つくっているところです。ただ精密検査の受診は、結果の伝え方の問題かなと思っています。

 基本的には検査を行ったところが、結果の説明の際に責任を持って精密検査を受けるように勧めてほしいですね。

 精密検査の受診率は、実はがんによって全然違います。例えば乳がんなら9割ぐらいが精密検査を受けるし、ほかのがん検診も8割くらい。ところが大腸がんの精密検査は6割くらいで、飛び抜けて受診率が低いんです。血液反応があっても、「痔のせいだろう」「生理のせいだろう」と思って深刻に受け止めない傾向があるようです。

近藤:大腸がん検診は偽陰性(病気があるのに、誤って陰性と判定されること)の割合が高いので、2日検査をして1回でも陽性なら精密検査を行うことになっています。陽性が出たら、それだけ危険ということですよね。

溝田:そうです。大腸がん検診は、ほかのがん検診と比べて陽性的中率(陽性と判定された場合に、実際に病気がある割合)が高いんです。

 例えば肺がん検診の陽性的中率は0.09%ですが、大腸がんは男性で0.36%、女性で0.18%なので発見率が高い。大腸がん検診で陽性の場合は危険性が高いので、必ず精密検査を受けてほしいと思います。

 特に女性は、女性のがんというと乳がん、子宮頸がんを心配する人が多く、大腸がんをあまり気にしていない人が多いようです。けれど実は、女性では大腸がんは死亡数1位、罹患率2位で、とても多いがんなんです。

近藤:便潜血検査は比較的簡単に受けられますが、大腸内視鏡検査は大変なので、受けにくいのかもしれませんね。

溝田:それでも、自分の命を守るためには受けてほしいですね。

 ところで大腸がんの便潜血検査は、費用対効果がすごく高いんです。ほかのがん検診は、検査に費用がかかるので、寿命を延ばす効果はあっても、医療費全体で見るとそれほど削減はできません。

 けれど大腸がん検診は受けた人が多ければ多いほど、寿命が延びるだけでなく、医療費も削減できます。そういう意味でも“お得な”検診なんです。

近藤:自分の健康を守る上に、社会にも有益ということですね。

 がん検診を受けてもらうために溝田先生のようなアプローチから試行錯誤を重ねているプロフェッショナルも存在するのですね。私も拙著『医者がマンガで教える日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』を通して、きちんとした情報を伝えて、がん検診を受ける人を増やしていこうと思っています。どうもありがとうございました。

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