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がん検診を「受けるデメリット」って何だろう

溝田:現在、日本では対策型のがん検診として、大腸がん(便潜血検査)、胃がん(胃X線または内視鏡検査)、乳がん(マンモグラフィ)、肺がん(胸部X線検査+喀痰検査(喫煙者のみ))、子宮頸がん(細胞診)の5種類が推奨されています。

 これらは、対象年齢の人は自治体の住民検診で、無料または低価格で受けられます。

 利益(ベネフィット)が不利益(リスク)を上回ることが確実で、厚生労働省の指針でも推奨されているので、ぜひ受けていただきたいですね。

近藤:この利益が不利益を上回るというところがとても大切なんです。

溝田:そうです。がん検診の利益として、死亡率減少効果があることが必須です。

 ですが検診には不利益もあります。不利益に見合う大きな利益があるものを受けるべきなのですが、何でもたくさん受ければいいと誤解している人は多いようです。
近藤:厚生労働省の指針で推奨されている5大がん検診にも不利益はあって、例えば胃カメラ(胃内視鏡検査)を受ければ、ごくまれに胃や食道に穴があく可能性があります。

溝田:そうですね。不利益としては、まず検査に伴う合併症があります。極めて低い確率ですが、胃カメラでは0.12%に出血や穿孔が起こり、0.0076%では死亡することもあり得ます。X線検査では、放射線被曝もします。

 合併症のほかには、偽陽性と偽陰性も問題です。

 検診の精度は100%ではないので、本当はがんではないのに陽性となって精密検査が必要になる場合(偽陽性)と、本当はがんなのに陰性で安心してしまい発見が遅れる(偽陰性)場合があります。

近藤:偽陽性があっても漏らさず見つければいいと思う人は多いようですが、精密検査を受けると費用も時間もかかるし、新たに偶発症のリスクもでてきます。それに陽性と言われたときの精神的ショックは、ものすごく大きい。そう考えると、やはり偽陽性もできるだけ少ないほうがいいですよね。

溝田:その通りです。それから、がん検診には過剰診断の問題もあります。

近藤:前立腺がんが、いい例ですね。PSA検査(前立腺特有のタンパク質PSAの血液中濃度を測定することで、前立腺がんを早期発見する検査)が広まって、早期の前立腺がんが多く見つかるようになりました。

 けれど、前立腺がんにはゆっくり大きくなるものが多いので、早期発見したから寿命が延びるとは限りません。

 早期発見をして手術をした場合と、治療をせずに経過観察をした場合では、死亡率には差がなかったという研究報告があります。

 寿命に差がないのなら、検診で見つけるメリットはありません。手術をすれば後遺症の可能性があるし、経過観察をするといっても、自分の身体の中にがんがあると思うと不安に感じるでしょう。がん検診には不利益もあるので、利益と不利益をよく理解した上で判断しなくては。

溝田:その点、自治体が対策型として行う5つのがん検診は、利益が不利益を大きく上回ることが科学的に保証されています。だからこそ厚生労働省の指針で推奨されており、公費の補助があるわけです。