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 連載特別版として対談記事を掲載しています。対談2回目に登場するのは国立がん研究センター社会と健康研究センター保健社会学研究部健康増進科学研究室室長の溝田友里氏。本連載の著者、近藤慎太郎医師は2018年夏、書籍『医者がマンガで教える日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』を発売し、「がん検診」についてマンガを活用しながら分かりやすく説明した。

 多くの人が、がん検診を受けなくてはと思っていても、分かりづらさや面倒な印象でついあと回しにしてしまいがちだ。果たしてがん検診は受ける価値があるのか。仮にあるとすればどのように活用すればいいのだろうか。まっとうながん検診の受け方について語り合った。(今回はその前編)

国立がん研究センター社会と健康研究センター保健社会学研究部健康増進科学研究室室長の溝田友里氏(写真左、撮影:竹井 俊晴)

溝田氏(以下、溝田):近藤先生の『医者がマンガで教える日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』を読みました。

 正直に申し上げると、帯の文句や小見出しには誤解をまねく表現もあって、「ウッ」とつまるところがあったのですが……本文をしっかり読むと、最新の情報をよく調べて書かれています。

近藤氏(以下、近藤):確かに帯や小見出しには多少、目に留まりやすい工夫をしています。やはり幅広い読者の皆さんに手に取っていただきたいので。

溝田:ただ中をしっかりと読めば、がん検診について様々な情報を理解するのにいい本だと思いました。ただこの本は、個人レベルの任意型検診の話から始まっていますよね。

 対策型検診と任意型検診について、きちんと比較していただけると、もっとよかったと思うのですが。

種類 対策型 任意型
目的 団全体の死亡率を下げる。 個人の死亡リスクを下げる。
実施条件 科学的に有効性が確立していて、利益が不利益を上回ること。 科学的に有効性が確立していて、利益が不利益を上回ることが望ましい。
検診の例 住民検診、職域検診 人間ドック

溝田:この表のように、がん検診は、目的や実施条件によって「対策型」と「任意型」に分けられます。また海外では、対策型よりも、対象をより明確に管理する「組織型」を実施する国もあります。

近藤:きちんと説明したかったのですが、そこをあまり詳しくやると、かえって混乱すると判断しました。対策型検診も、自治体によって内容が違う場合もありますし。

溝田:市町村が行う対策型検診は、人間ドックのものより劣ると思われがちですが、本当は、一番エビデンス(科学的根拠)データが確かな検診です。

 例えば、2010年(平成22年)、日本では年間で大腸がんで4万4238人が亡くなっていますが、大腸がん検診の受診率は24.8%です。ところが私たちの試算によると、もし受診率が100%になった場合の死亡者減少効果は53.0%になります。仮に受診率が50%の場合でも死亡者減少効果は17.8%になる。