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患者さんの個性に合わせて伝える時代に

近藤:そして、もしかするとそれが一番正確な情報になるかもしれませんね。医師だって、どうしても個人の経験でものを言いがちです。そういう部分がフラットになる効果も期待できる気がします。

仲野:例えば患者さんがどの程度弱気か、どの程度痛みに強いか、といった情報も入力して、AIがその人に合った説明をしてくれるようになると素晴らしいですね。医師はそういったトレーニングをほとんど受けていませんから。

患者さんへの伝え方などは、医師のみなさんはそれぞれ自分の経験を通して独自の方法を磨いていくのでしょうか。

仲野:医学部ではそこまで教えていませんから。そこまで教えようとすると、さらに2年くらい勉強しなくてはならないかもしれません。

近藤:本来ならば、患者さんがどういう精神状態で、どれくらいの理解の状態かによって、医師は説明方法を変えなくてはいけません。

 ただその時に食い違いが生じたり、医師の伝え方が下手だったりすると、場合によっては患者さんに満足していただけないことがある。

 そこをAIがうまく説明してくれたら、それはすごくいいかもしれません。もしくは、「こういう風に説明してください」というアンチョコを医師に渡してくれるとか(笑)。

仲野:そうなっていくんじゃないでしょうかね。もしかすると患者さんも、AIの方が何でも聞きやすいかもしれません。

 「こんな初歩的なことを先生に聞いたら怒られるんじゃないか」と躊躇したりすることもありませんから。AI側だって、生身の医師のようにイラッとしたりすることもないでしょうし。

近藤:やっぱりどうしても医師も顔に出てしまうと思うんです。忙しい時には、「何でここまで説明しても分からないんだ」と思ってしまうこともありますし。

仲野:その点、AIの方が根気強い。何度も同じことを説明してくれるでしょうし、患者さんの満足度も上がるんじゃないかなと思います。

 実は僕は、医学教育にもAIを活用したらいいと思っているんです。いずれはAIが教えるようになったら、先生にとっても学生にとってもメリットがある。学生はどんな時間帯でも繰り返し教えてもらえるし、怒られないし(笑)。

(後編に続く)

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