女性の場合、女性ホルモンの減少によって更年期症状が起こることはよく知られています。どういった症状が起こるのか、そしてどう対処すればいいのか、女性が歳を重ねるうえで、非常に重要な問題として取り上げられてきました。

 しかし一方で、男性ホルモンの増減については、今まであまり注意が払われてきませんでした。「おそらく減るのだろうが、仕方がないことだ」という程度の認識の人が多いのではないでしょうか。女性のように、閉経のタイミングで様々な症状が顕在化するという分かりやすさがないことも影響しているでしょう。

 しかし、近年の様々な研究の結果、男性の加齢に伴う「いた仕方ない変化」として捉えられてきた様々な症状の発現に、テストステロンの減少が深く関わっていることが分かってきました。

テストステロンの低下が巻き起こす様々な症状

 例えば、冒頭で解説した「ED(勃起障害)」は象徴的です。ほかにもテストステロンは、「筋肉量の低下」や「肥満」、「骨密度の低下」といった肉体的な変化に関わっています。いずれも転倒や骨折、その結果としての寝たきりのリスクを上げる強力な因子です。

 精神・神経的な症状としては「うつ」があります。今までは「老人性うつ」イコール仕方ないこと、として説明されてきました。精神・神経領域に関しては発症メカニズムを数値として捉えることが難しいため、診断・治療においては、個々の医師の裁量に負うところが大きいという限界があったのです。

 しかし、もしテストステロン値を一つの指標として用いることができるのであれば、予防・対処方法も変わってくるでしょう。

 さらには「認知症」。本人にとっても家族にとっても深刻な問題です。深刻な高齢化が進む日本にとっては極めて大きな不安要素です。

 EDから筋肉量の低下、肥満、骨密度の低下、老人性うつ、認知症……。一見してバラバラのこうした症状が、「テストステロンの減少」というキーワードで横断的に説明可能なのです。では、順を追って解説していきましょう。

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