前立腺がん、治療の選択肢は多岐に渡る

 さらに言えば、実はこうした問題は、前立腺がんに限ったことではありません。本連載でも既に解説しましたが、肺がんのCT検診も、悪性度の低いがんを見つけている可能性が指摘されているのです。

 ほかに厚生労働省が認める検診対象のがん(胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がん)にも、前立腺がんほどの頻度ではないにせよ、本質的に同様の可能性が潜んでいます。

 この先も、画像検査を含めた医療の技術が進歩するほど、小さくて、良性と悪性の境目(グレーゾーン)の病変が見つかりやすくなるのは、間違いありません。その取り扱いをどうするのか。すべて治療するのか、経過観察して慎重に様子を見るのか、医療経済も含めたマクロな視点から議論する必要があるのです。

 こうした状況を踏まえたうえで、話を前立腺がんに戻しましょう。

 前立腺がんが見つかって、治療を選択したとします。実はここから先も事情はそう単純ではありません。というのも、治療の選択肢が、非常に多岐にわたっているためです。

 早期~中期の前立腺がんであれば、「外科的手術」「放射線療法」「ホルモン療法」が、進行癌であれば「抗がん剤治療」が選択肢として上がります。しかも外科手術では「一般的な手術」と最近話題の「ロボット手術」(後ほど解説します)に、放射線療法は外から放射線を当てる「外照射」と小線源を体内に埋め込む「組織内照射」の選択肢があります。

 さらに、エビデンス(科学的な証拠)はまだ乏しいですが、「高密度焦点超音波療法(HIFU)」「凍結療法」「粒子線治療(陽子線、重粒子線)」といった選択肢もある。

 一体、なぜこんなに複雑な状況になっているかというと、やはり悪性度が低いという前立腺がんの特徴が色濃く影響しているのです。

 そもそも早期がんであれば、20年間無治療で経過観察しても死亡率に差がつきにくいのです。ならば、治療法Aと治療法Bのどちらがいいかを比べてみようと思っても、当然、死亡率に差が出ることはありません。結局、どの治療方法が、どの程度良いということがはっきりせず、差別化できないため、様々な治療法が乱立しているのです。

 今後も、「どの患者に、どの方法をどう組み合わせるか」というベストミックスを決めるのは至難の業でしょう。

 そしてもう一つ、重要な問題が残っています。それは治療による合併症がどうなのかということです。